イチロー「引退ではない」 球団からの贈り物に賞賛の声

イチロー「引退ではない」 球団からの贈り物に賞賛の声

米大リーグ、シアトル・マリナーズのイチロー選手が日本時間4日、同球団の会長付特別補佐に電撃就任した。地元メディアとして記者会見に出席したBizSeeds編集部記者が、「イチロー選手とマリナーズ球団に対する地元シアトル市民の反応」をリポートする。


イチローへの対応はすべて「異例」

  シアトル・セーフコ球場で急遽開催された記者会見。日本でも大きく報道されたように、イチロー選手は、「この日が来る時は、やめる時だと思っていた」と語った。しかし、そう語ったのは先月から噂されていた引退会見ではなく、「会長付特別補佐への就任発表」会見の席。マリナーズ球団によるイチロー選手へのこの配慮は、全米メディアでも“異例のオファー”だと大きく報じられた。

  春キャンプ終盤にマリナーズの外野手に故障者が相次ぎ、古巣に電撃復帰したイチロー選手のニュースに、シアトルは湧いた。本拠地での開幕戦でイチローの名前がアナウンスされたときには、球場が揺れるほど誰よりも大きな歓声が上がった。しかし、以前のような活躍が見られないまま、4月半ばにレギュラー陣が復帰し、イチロー選手の試合出場機会は激減。それでも、マリナーズは異例の「外野手5人体制」を続けた。

 米大リーグで、ベンチ入りできる選手枠は1チーム25人。そのうち外野手は通常3〜4人だ。そのため、この「外野手5人体制」は、シアトルの野球ファンたちの間で大きな波紋を呼んだ。イチロー選手は歴史的に稀に見る秀でた選手であり、ランディ・ジョンソンとケン・グリフィーJRに続き、野球殿堂(Hall of Fame)入りが期待される「マリナーズの象徴」だ。しかし、イチロー選手がどれほどレジェンドであっても、日々の試合に勝利し、プレーオフ出場を目指すチームにとって、レギュラーではない44歳のイチロー選手をベンチ入りさせておく余裕はないという声は、4月後半のシアトルでは無視できないほど大きくなっていた。

勝つために試合をする それがプロの野球ではないのか?

 当然のことだが、試合は勝つためにある。イチロー選手は「50歳まで引退しない」と公言していたが、それは彼個人の計画である。2軍へ降格するオプションはないイチロー選手にとっては、「ベンチ入りできない=解雇」。4月後半から多くの地元メディアが「イチローの引退発表は今日か、明日か?!」と報道し続けていたのは、こうした背景からだ。

 だが、イチロー選手には引退する意思はない。しかも彼は、打席に立てば球場全体から「イチロー・コール」が起きるスーパースターであり、44歳とは思えない高い身体能力と深い野球の知識と経験を持ち、大リーグ18年のシーズン通算成績は、ヒットが歴代21位の3089本、打率3割1分1厘。ホームラン117本、打点780、盗塁は509本という偉業を達成した特別な選手である。そんな選手を「解雇する」という選択肢はあり得ない。そんな中で球団が考えた解決策が「会長付特別補佐」の椅子を用意することだった。

「選手の可能性を閉ざさない」、球団からの贈り物

 会長付特別補佐は珍しい役職ではないが、イチロー選手に対するマリナーズ球団の誠意が伝わるのは、その条件だ。今季は現役選手としてユニフォームを着てチームと共に毎日練習を続け、遠征にも帯同できるが、試合に出ることだけはできない。しかし「来季以降は試合に復帰することもできる」という異例の条件をつけた。これは、まだ引退する意思がないイチロー選手にとって最高のオファーだろう。

 その証拠にイチロー選手本人も「それ(来季の復帰)があることで明確に目標を持っていられる。チームがそういうスタンスで、こんな形をとってくれることは、本当に信じられないこと」と話し、大リーグでも前例がない特別なオファーに対して感謝の意を表明している。

 マリナーズ球団のディポトGMは会見で、「イチローが今季だけでなく、その先もマリナーズに残ることを確実にすることが重要だった。補佐役の就任はイチローが選手として試合に出場する可能性を閉ざすものではない。彼はマリナーズ以外の球団でのプレーを望んでおらず、マリナーズの選手として引退することを望んでいるが、引退はまだ先のことだ」と、球団における彼の価値の高さを力説した。

 シアトル・マリナーズは、来年3月に米大リーグ機構と読売新聞社の協賛により、東京ドームで大リーグ開幕戦を行うことが既に決定している。今回の役職就任により、イチロー選手もマリナーズの一員として東京ドームへ行くことは確実だ。シアトルの地元記者団から「日本での来季開幕戦にイチローは出場するのか?」と聞かれたディポトGMは、「来季もチームに残ることを彼が断らない限りは」と満面の笑みで答えていたが、おそらくそれは本意だろう。

 才能に溢れ、日々の努力を惜しまず、まだ現役続行が可能なアスリートが自身の引退を決めるのは極めて難しいことだろう。そんな中で、同球団が「イチロー選手=シアトル・マリナーズ」という図式と天才アスリートへのリスペクトを守りつつ、勝つために存在するプロ野球球団としての任務を推進できるような判断をこれほど素早く下したことに、シアトル市民は心からの賞賛を送っている。いろんな意味で、極めてアメリカらしいビジネスの進め方といえる出来事だった。

“オタクとハイキングの日”シアトル市で公認化

https://bizseeds.net/articles/163

引用元『Official ‘Hike with a Geek Day’ encourages tech and science workers to unplug and refresh outdoors』:https://goo.gl/LEbSui

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