ムスリムのトランプ支持者たち

ムスリムのトランプ支持者たち

多様なアメリカでは、暮らす地域によってすべてが異なる。テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は大手メディアではほとんど報道されない「イスラム教徒のトランプ支持者」について紹介する


ラマダンはムスリムたちの本音を聞くチャンス

 ラマダン期間中(今年は5月17日から29日間)というのは、興味深い時間を過ごすことができる時でもある。毎晩ムスリムの友人、知人に夕食に招待され、食後にリラックスして紅茶を飲みながら、ふだんは決して聞くことができない本音を聞けるからだ。今回は、ここ数年のラマダン中に耳にしたアメリカの政治に関する意外な事実をお伝えしたいと思う。

 2010年に行われた国勢調査に基づく推定によると、アメリカのムスリム人口は約700万人。内訳は、黒人24%、アラブ系26%、南アジア系26%、その他24%となっている。大手報道機関のニュースを見ていると、アメリカのムスリムは皆アンチ・トランプで、トランプ政権のムスリム入国希望者に対するExtreme Vetting Policy(徹底的身元調査方針)や厳しい不法移民取締政策に大反対しているように思えるだろう。しかし、実際は、報道とは大きく異なる点がある。それはアラブ系と南アジア系のムスリムの多くは、トランプ政権のこれらの方針を大歓迎しているという点だ。

 特に、サダム・フセインの暴政、紛争が絶えないシリアやレバノンを逃れてアメリカに移住してきたイラク人、シリア人、レバノン人には、トランプ支持者が多い。彼らはそれぞれの国の過激派たちが、難民に混ざってアメリカに侵入しようとしていることを祖国にいる知人や親戚から聞いて知っているので、トランプの徹底的な身元調査方針は妥当な政策だと考えている傾向が強い。

 また、インドネシアやマレーシアから来たムスリムには、ビジネスマンや高等教育を受けた人々が多く、彼らもイスラム国に感化されたムスリムが、難民の振りをしてアメリカに入ってくることを恐れている。そのためトランプの方針がムスリム差別だとは思っていないことが多いのだ。

 さらに、 アラブ系ではないが、アヤトラ・ホメイニのイラン革命を逃れてアメリカに移住してきたイラン人も、イランに媚びたオバマ政権とは対照的にイランを声高に批判し、イラン核合意から離脱したトランプ政権に感謝の念すら抱いていることが多いようだ。

トランプ支持でも声を上げられない理由とは

 これらのムスリムに共通しているのは、彼等が祖国には存在しない自由や安全を求めて自らの意志でアメリカにやって来た、ということ。彼らはアメリカが好きだからこそ、アメリカに移住してきたのだ。また、彼らは、難民として、あるいは労働許可証を取得して、法を順守し、何年も順番待ちをして合法的に永住権や市民権を入手した人々でもある。そのため、正当な手続きを取らずに”抜け駆け”して、順番待ちをせずにアメリカに”割り込もう”とする不法移民たちの態度については、否定的でもある。むしろ、トランプの厳しい不法移民政策はフェアーだという見解を示していると言えるのだ。

 しかし、彼らは公の場では、こうした本音を言うことはまずありえない。ムスリムのトランプ支持派は、「多くのムスリムが反トランプらしいので、本音を言ったら、ムスリムのコミュニティーから裏切り者扱いされ、追放されてしまうだろう」と恐れているのだ。アメリカの大手報道機関は、ムスリム難民や不法移民をほぼ無条件で受け容れることを要求している民主党系ムスリムの意見のみをフィーチャーしているので、「ムスリム=反トランプ」というステレオタイプが定着しているからだろう。人種差別者呼ばわりされることを恐れて本音を言えない、言わば「隠れトランプ支持者たち」同様、アメリカには実は声をあげられないムスリムのトランプ支持者も意外と多いのだ。

 アメリカの大手メディアの報道や世論調査は、鵜呑みにしないほうがいいだろう。

ブッシュ夫人の死を喜ぶリベラル派が浮き彫りにしたものは?

https://bizseeds.net/articles/708

多様なアメリカでは暮らす地域によってすべてが異なる。テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回はバーバラ・ブッシュ夫人の訃報を喜んだリベラル派大学教授のツイート炎上に関する保守派の意見を紹介する。

アメリカの「社会・政治」に関する記事

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

関連する投稿


人工中絶はいつでも出来る?

人工中絶はいつでも出来る?

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。米バーモント州で、妊娠週に関係なく人工中絶できるという法案が可決したことで教会は大騒ぎ。アメリカはどこに行くのだろう?


トランスジェンダーの選手とそうでない選手の競争はフェアーなのか?

トランスジェンダーの選手とそうでない選手の競争はフェアーなのか?

米テキサス州に暮らすイスラム教徒のジャーナリスト・西森マリーが、米国内でも報道されにくい保守派の声やテキサス州など南部の住民たちの声をお届けするコラム。今回は、生まれたときの性別と異なる性別で活躍するトランスジェンダーのスポーツ選手たちが、そうでない選手との身体能力差が大きく議論されている問題について。


リベラル派がフェイクニュースと呼ぶ「FOXニュース」視聴率、全米1位

リベラル派がフェイクニュースと呼ぶ「FOXニュース」視聴率、全米1位

トランプ大統領が唯一、フェイクニュースと呼ばないテレビ局としても知られる「FOXニュース・チャンネル」が、米ケーブル局の視聴率調査でCNNなどの大手局を抑えて、堂々たる1位を継続中だ。なぜ、FOXニュースはこれほど人気が高いのだろうか?


トランプ大統領、保守派も唖然としたタブー発言で人気高騰

トランプ大統領、保守派も唖然としたタブー発言で人気高騰

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、ポリティカル・コレクトネスに反するとして、歴代の米大統領たちが「演説や発言では使わなかった三文字」をトランプ大統領が頻繁に使うことについて。


大都市に住むアメリカ人たちが知らないテキサス人の真の姿

大都市に住むアメリカ人たちが知らないテキサス人の真の姿

米テキサス州に暮らすイスラム教徒のジャーナリスト・西森マリーが、米国内でも報道されにくい保守派の声やテキサス州など南部の住民たちの声をお届けするコラム。今回は、保守派が多く住むと言われるテキサス州で、人々はどのように軍人を見ているのかがわかるニュースにまつわる話。






最新の投稿


アメリカでタイダイ柄がカムバック! 政治の影響がファッションに

アメリカでタイダイ柄がカムバック! 政治の影響がファッションに

1960年代のアメリカを一世風靡したヒッピー・ムーブメント。その頃の若者たちが着ていたカラフルな絞り染め、「タイダイ柄」を覚えているだろうか? 1950年代の厳しい社会的規範から逃れて自由を謳歌し、個人を表現するカウンター・カルチャーのシンボルとして大流行したタイダイ柄が、アメリカで再び流行り出しているようだ。


成功への選択「時よ、止まれ!」2019年3月15日~3月21日

成功への選択「時よ、止まれ!」2019年3月15日~3月21日

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが送る「成功への選択」。算命学、数秘術、占星術などをベースにしたオリジナル手法を用いて、あなたが切り開くべき幸運への扉のヒントを毎週アドバイスします。さて、あなたのビジネスを成功に導くのは、どちらの選択肢でしょうか?


人工中絶はいつでも出来る?

人工中絶はいつでも出来る?

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。米バーモント州で、妊娠週に関係なく人工中絶できるという法案が可決したことで教会は大騒ぎ。アメリカはどこに行くのだろう?


アメリカで「チーズ・ティー」は流行るのか?

アメリカで「チーズ・ティー」は流行るのか?

「抹茶」がアメリカで初めてブームになったとき、そのまま抹茶が茶市場に定着すると思った人はどれほどいただろうか? あとに続いた「コンブチャ」も「ボバ・ティー」も同様に一過性ではなく定着した。そんな中、中国や台湾で流行っている「チーズ・ティー」がアメリカに進出したが、第4の流行茶になるだろうか?


トランスジェンダーの選手とそうでない選手の競争はフェアーなのか?

トランスジェンダーの選手とそうでない選手の競争はフェアーなのか?

米テキサス州に暮らすイスラム教徒のジャーナリスト・西森マリーが、米国内でも報道されにくい保守派の声やテキサス州など南部の住民たちの声をお届けするコラム。今回は、生まれたときの性別と異なる性別で活躍するトランスジェンダーのスポーツ選手たちが、そうでない選手との身体能力差が大きく議論されている問題について。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング