無意識に誰よりも「差別」をする人たち
「最近は偽リベラルが多い」――先日、遊びにいった友人の家で出会った、東海岸で大学教授をしている男性がつぶやいた言葉だ。彼は根っからのリベラル主義者で、かれこれ30年以上も黒人の地位向上と貧困救済のために全力を尽くしている。現在は黒人に関する問題以外にも、LGBTへの差別撲滅に取り組む非営利団体で理事をしていると言っていた。
「社会全体をすべての人が俯瞰することなしに、真に平等な社会は訪れない」と語る彼自身は白人で、個人的な差別を受けたことは全くないという。そんな彼を最もイラつかせるのは、リベラル主義を公言しているのに、無意識のまま差別的発言をしてしまう人達の存在だという。そういう人は時代の風潮に乗っかり、根拠の乏しい報道に反応して大騒ぎする輩に多く、マイノリティーに対してだけでなく、本物のリベラル派たちさえも傷つけている、と彼は語った。
「私たちは、あなたを差別しない」という差別
真のリベラル派たちは、差別の対象になりかねない相手に向かって、「私たちは、あなたを差別しない」などというような発言をわざわざすることはない。例えば、ピンクの猫耳帽子で知られる「Women’s March」のデモに参加した黒人の友人が、デモ行進の最中に何人もの白人女性たちから「私は、あなたが黒人でも差別はしないわ!」と言われて、嫌気がさしたというエピソードがある。このエピソードを彼に伝えたところ、彼は、「こうした事例こそが、私の言うタチの悪い偽物リベラル発言なのだ」と指摘した。
同じ目線で、すべての人が平等であることを理解している人間であれば、その人の人種背景をわざわざ語る必要はない。しかし、無意識な差別をひっさげた偽リベラルたちは、思わぬ形で「自分たちが優位であると思っていることを前提に」、様々な心ない発言をしてしまう。
「私は世の中を良くするためには、真のリベラル的思想が必要だと思っている。しかし、それは保守を完全否定し、マイノリティーたちに向かって大声で“自分は差別しない”と発言するようなことを前提にはしない。様々な差異に寛容でなければ、真のリベラルであると自らを語るべきではない」
私は、彼に激しく同意する。

保守とリベラル派の対立が激化し、「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが「アメリカ」を語る。1,100万人以上とされるアメリカの不法移民。トランプ政権発足後、取り締まりが強化されているが……。
青山学院大学卒業。コマーシャルなどの映像コーディネーターを経て1998 年、宝塚歌劇団香港公演の制作に参加。その後プロデューサーに転身。株式会社MJ コンテスほか複数企業の代表として、ネバダ州立大学公認のピラティススタジオ日本進出事業や各種研修事業、2007 年に行われた松任谷由実の 「ユーミン・スペクタクル シャングリラⅢ」をはじめとする国内外の舞台・イベント制作など、さまざまな事業を展開。これまでにベストセラー数冊を含む70以上の書籍、DVD 作品を企画、プロデュース。現在も様々な事業を展開しながら“Go Tiny”(大切なものが、すべて半径5メートル以内にあることに気づこう!の意)というライフスタイルの提案も展開中。