空への夢の始まり16 — 英語で教官免許の試験に挑戦

空への夢の始まり16 — 英語で教官免許の試験に挑戦

外国人には狭き門である、アメリカ一般旅客機パイロットへの道。その難関を突破し、育児をしながら現役活躍中の青木美和が、「夢の叶え方」を航空産業最新情報と共にお届けする『Sky High America』。次々と規定の航空免許取得に挑戦して、それを取得することを重ねる大学生活。その最後の難関は英語で説明する教官免許の試験だ


事業用免許と双発機免許を取得

 計器飛行免許を取得した後は、事業用免許のトレーニングが始まった。ここでは主にソロ・フライトを多くこなし、パイロットとしての経験を積み重ねる。また、飛行に必要なテクニックを学び、飛行機の操縦を明確に安定して行える技量を培う。計器飛行免許の取得を通して、管制塔とのコミュニケーションには自信がついてきた私だったが、ほとんどのソロ・フライトを夜間に行った。なぜなら、夜は空があまり混んでいないため、管制官たちも割と穏やかで、優しい口調で話してくれるからである(笑)。

 無事に事業用免許を取得した次は、双発機の免許だ。大学1年生の頃から単発の小さな飛行機を使ってトレーニングをしていた私たちは、誰もが首を長くして双発機に乗る機会を心待ちにしていた。

 双発機にはエンジンがふたつあるため、一般的には単発機よりも安全だと思われがちだが、ここでのトレーニングのポイントは、片方のエンジンが飛行中に止まってしまった時の対応法だ。双発機は単発機と違い、エンジン・トラブルが起きると横転してしまうので、これをしっかり練習しておくことが重要だった。トレーニングでは、実際に教官が片方のエンジンをわざと空中で止めて、方向舵を思いっきり足で操作しながら操縦桿を手で操作する。私の場合、初めはあまりにも足の力が足りず、飛行機を思うようにコントロールできなかった。何度も教官に「もっとしっかり脚で方向舵を抑えて飛行機の横転を止めろ!」と注意された。トレーニングの後に地上に降り立つと、足がブルブルと震えてうまく歩けないほどだったので、教官から「ジムに通え! そんな筋肉のない脚では危なくて飛ばせないぞ」と言われた。

 大学生活も後半戦に差し掛かり、そろそろプロのパイロットになれると確信し始めていた時期だったので、教官の言葉はとても悔しかった。その日から学校のジムと街中にあるスポーツジムの両方に通って、体力強化と筋肉強化のトレーニングを始めた。これがきっかけで始まったジム通いは、その後、エアラインの仕事に就いてからもずっと続いている。結果的に良い健康管理習慣となったことは、よかったと思っている。

英語で教官免許を取らねば、大学を卒業できない

 双発機免許を取得後、最後にもうひとつ待っていたのが教官免許である。大学を卒業するために必要な免許 で、アメリカでプロのパイロットを目指す人のほとんどが教官免許を取得する。

 一般的に、エアラインに就職するためには1,500時間ほどのフライト時間を持っていなければならない。事業用免許を取った時点でのフライト時間が250時間なので、1,500時間は長い道のりだ。自腹で1時間何万円もするフライト経験を,1500時間まで積み重ねるには相当な大金が必要となるため、プロのパイロットを目指すほとんどの人がまず教官となり、生徒に教えながら自分の滞空時間を貯めるのである。

 人に教えること、しかも英語で飛行術を教えることは、とても難しい。自身が本当に理解していないと、相手が納得いく説明をしながら教えることは出来ない。英語のハンディを指摘されず、丁寧に細かいところまで説明が出来るようにと、私は一生懸命勉強した。

 試験当日、4時間の口頭試験では時間一杯に使い切り、試験官に分かりやすいようにホワイトボードに絵を描きながら、ゆっくりと丁寧に説明した。その甲斐あって、試験は合格。その上、そのときの試験官自らが、フライトスクールのチーフパイロットに私を雇うようにと推薦してくれたのだ。ほとんどの人は、試験官を相手に教官試験を受ける際には、相手がもう既に飛行機の基礎知識を持っていることを前提に説明するが、私の場合は「まったく飛行機の知識がない子供に教えているかのように、基礎の基礎から説明していたところ」が評価されたのである。教官から「とても分かり易かった」と、夢にも思っていなかった最高の褒め言葉をいただいた時、以前は「アルタネーター」という単語さえ知らなかった自分の経験を思い出して懐かしく、そして誇らしく思った。

銃を規制しても問題は解決しない

https://bizseeds.net/articles/672

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