【Red vs. Blue】差別ツイートをした人気女優の番組を即打ち切ったTV局をどう見るか?

【Red vs. Blue】差別ツイートをした人気女優の番組を即打ち切ったTV局をどう見るか?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は、高視聴率の冠番組を持つ女優が人種差別ツイートをした直後に、その女優をクビにしたABCテレビの対応について


 先月29日、米3大TV局のひとつであるABCが、同局で高視聴率を誇る人気コメディー番組『ロザンヌ』を突然打ち切った。同番組の主演女優ロザンヌ・バーが自身のツイッターで、オバマ政権の上席補佐官を務めたイラン生まれで黒人の両親を持つバレリー・ジャレット氏のことを、「ムスリム同胞団と映画『猿の惑星』の落とし子」とツイートした直後のことだった。『ロザンヌ』は米芸能界では珍しく、トランプ現政権支持者を主役にしたコメディー番組で、主演のバー自身もトランプ支持者。これまでも差別的な発言を繰り返してきた女優のため、今回のABCの対応の早さから、同局はもともと彼女の言動を懸念しており、番組打ち切りの理由を探していたという声も聞かれる中、バーの発言は保守系評論家を含む多方面からも厳しい非難を浴びている。保守派とリベラル派一般人の意見はいかに?

出典『The Hill』
'Roseanne' storm revives debate over Trump

【RED : 保守派】主演女優がトランプ支持者だからと人気番組を打ち切ったバカなABC

ABC destroys hugely successful television show because Roseanne Barr likes Donald Trump

 ディズニーが所有するテレビ局、ABC の幹部は単なる能無しだ。『ロザンヌ』の打ち切りは、このコメディー番組の収益性とは関係ない。『ロザンヌ』は同局の今シーズンのコメディー番組の中でダントツの視聴率を誇るだけでなく、全テレビ局の番組中でも上位6位、1話につき毎週1,300万人以上のアメリカ人が視聴していた実績を誇る。それなのに、なぜ打ち切られたのか? オバマ政権の元上席補佐官バレリー・ジャレット氏に対するロザンヌ・バーのツイートは、彼女を解雇して人気番組を打ち切るほど無礼、あるいは憎悪に満ちたものだったのか? 

 私はロザンヌ・バーのツイートは、番組の打ち切りとはほとんど関係ないと考えている。ABCは自身がコントロールするポップカルチャーの世界において、トランプ大統領や保守的な価値観を支持したり、目立ったものは何でも破壊する努力をしているようにさえ思える。

 ティム・アレン主演のABCの人気コメディー番組『Last Man Standing』も、6年続けて成功を納めていたのに昨年、不可解なほど突然打ち切られた。同番組はABCで2番目に視聴率が高く、1話につき平均810万人を超える視聴者を抱えていたため、多くのエンターテイメントの専門家が、打ち切りの理由に首を傾げた。

 私見では、この2番組は、ABCとディズニーのリベラルな幹部たちが受け入れたくない2つの事実を実証していたために中止されたのだと思っている。そのひとつ目は、依然としてマジョリティーのアメリカ人には保守的な価値観が人気があるということ。そして、ふたつ目は(TV視聴率の高さがなんらかの示唆をするというのであれば)、アメリカ人の多くは、トランプ大統領が好きということである。

【Blue : リベラル派】人種差別者であることは、意地悪を超えている

Being Racist Is More Than Just Being Mean

 アメリカの保守派は、「言論の自由」に対して、おかしな考え方をする傾向がある。右派の誰かが人種差別批判を受けるたびに、「それは言論の自由だ!」と叫び、「リベラルは人の発言をすべて監視している」と怒る。その一方で、右派に同意しない者は、表に出すのも恥ずかしいバカ者のように扱う。嵐のようなトランプのツイッター攻撃は、こうした行動を代表するものといえるだろう。

 ロザンヌ・バーは今年になって突然、人種差別主義者になったわけではない。彼女が黒人女性を猿と比べたのは、今回が初めてではないのだ。2015年、ロザンヌは、オバマ元大統領の国家安全保障担当大統領補佐官だったスーザン・ライスについて、「スーザン・ライスは大きな猿の金タマを持つ男だ」とツイートした。しかし過去のロザンヌによる人種差別発言は、炎上を招く直前で収まっていた。これまでの彼女の差別主義は、陰謀説や宗教に関する見当違いなコメント、その他のツイートやメディアでの変わった発言に紛れていたせいで、見逃されてきたのだ。

 今年の初め、スウェーデンに本社がある「H&M」は、黒人の子どもが、「ジャングルで最高にかっこいい猿(coolest monkey in the jungle)」という文字入りのTシャツを着ている広告を発表して、世界中から怒りを買った。ロザンヌのような有名人が、世界的に炎上した「H&M」の同広告にまつわるニュースを見逃したとは思えない。黒人を猿と呼ぶことなど、決して許されないことを忘れている白人がこうして存在するのは、驚くべきことだ。それ故、ロザンヌがヴァレリー・ジャレットを猿になぞらえたときには、リベラル派だけでなく、あらゆる方面から批判が押し寄せたのである。

 ABCの社長はバレリー・ジャレットに電話して、自分のテレビ局の役者が大変失礼なことを言ったと謝罪したが、それに対して、なんとトランプ大統領は自身のツイッターで、ABCは自分に大変ひどいことを言ったと苦情をこぼし、「(自分に対する)社長の謝罪はどこだ、教えてくれ」とつぶやいた。トランプは今年1月に、黒人が大多数を占めるアフリカの国々のことを「肥溜めの国」と呼び、その発言が人種差別的であることに対して、知らぬふりを通した。その上、トランプは、ロザンヌがクビになったのは、番組の役と同様、ロザンヌがトランプ支持者だったからだとほのめかした。ロザンヌ側の「言論の自由に対する権利の侵害」だとか、彼女をクビにしたのは政治的正当性が行き過ぎた良い例だなどと保守派が主張するのは、ロザンヌがトランプ支持者であるからに他ならない。

 言論の自由とは、結果に責任を持たなくても良い、という意味ではない。米憲法は、「政府は、政府に反対する意見を言ったという理由で国民を罰してはならない」と定めている。しかし、誰かが非常に悪意のあることを言ったという理由で、一般企業がその人間をクビにしてはならないとは、どこにも書かれていない。ABCはロザンヌをクビにすることで、従業員の差別主義は受け入れないことを表明した。人には尊厳を持って接するべきだと考える者にとって、その表明は何の問題もないはずだ。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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