同性カップルにウエディング・ケーキを販売しない店が勝訴した理由

同性カップルにウエディング・ケーキを販売しない店が勝訴した理由

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は「男性同士のカップルに対してウエディング・ケーキを販売することを拒否したベーカリー」の側を支持する判決を“米最高裁判所”が出したことに対して、憤るリベラル派の意見を伝える


同性愛は反宗教的だからケーキを売らないなんて、ありえない!

 今月4日、米連邦最高裁判所は、同性カップルにウエディング・ケーキを販売することを拒否したコロラド州のベーカリー経営者に対して有利な判決を下した。アメリカ中の「偏見者たち」は、この判決を聞いて、ゲイの人々を差別することを国から励まされたように感じ、このベーカリーの勝訴を祝った。テネシー州のある工具店のオーナーは、早速『ゲイお断り』と書いた張り紙を店先に出すなど、偏見者たちは湧いている。

 しかし、最高裁判所が下した判決は、本当にゲイの人々に対してサービスを提供することを拒否しても良い、という意味だったのだろうか?

 2017年、コロラド州のベーカリー経営者が、同性カップルにウエディング・ケーキを売ることを拒否した。彼はキリスト教徒として同性同士の結婚に反対しており、このカップルにケーキを売ることは、彼の「宗教的信念に反する」と主張した。しかしコロラド州では「性的指向に基づいた差別は禁止されている」ので、そのカップルはコロラド州の公民権委員会に訴状を提出。その後、コロラド州の裁判所で訴訟が提起された。この訴訟では同性カップル側に有利な判決が下され、ベーカリー経営者に対しては「今後は方針を変え、同性カップルにもケーキを売るように」と命じられた。

 しかし、ベーカリー経営者は裁判の結果を不服として、コロラド州の最高裁判所に上訴した。が、同州の最高裁判所は上告を棄却。そのためベーカリー経営者は、アメリカの連邦最高裁判所に対して、「コロラド州の裁判所が自分の宗教的信念に反してケーキを売ることを命じたことは、言論や宗教の自由を保障している憲法修正第一条の権利を犯している」として上告した。

 最高裁判所が、このベーカリー経営者による訴訟の審理をすることに同意したため、多くの人々が「米連邦最高裁判所がどんな判決を下すのか」と興味を持って見守っていた。性的指向に基づく差別から人々を守る法律は、アメリカでは比較的新しい。その一方で、言論や宗教の自由は神聖であり、犯すことはできないものだからだ。

最高裁の保守とリベラル派のバランスが崩れてしまったアメリカ

 結局、 多くの人々の予想に反して、最高裁判所は画期的な判決を下すことはできなかった。それは非常に狭い範囲のものだったが、最高裁は「この特別な事例に限り、コロラド州の裁判所は、宗教的信念に基づいたベーカリー経営者に対して敵意を持って不当な判決を下した」という判決を下して、コロラド州裁判の判決を覆した。ベーカリー経営者の勝利となったが、この判決においては、さらに大きな問題である言論や宗教の自由については全く取り上げられなかった。この重要な問題が取り残されたまま、判決が下ったのだ。

 それでも、右派の多くの人々はこの判決を彼らの勝利だと見た。彼らがそう思わない訳がない。何年もの間、右派メディアは、彼らの読者や視聴者に向かって保守的なキリスト教の価値観のみが真のアメリカの価値観であり、それらの価値観(従ってアメリカ自体)が、リベラル派から攻撃を受けていると信じるように世間に洗脳してきた。右派はアメリカ社会が徐々に、より多様なものを受け入れるようになったと感じている。そしてその変化が恐ろしいのだ 。結果、彼らは右派メディアが作り出す噓を信じ、この国を彼らがイメージする「かつてのアメリカに戻す」と約束している共和党に投票したというわけだ。その「かつてのアメリカ」とは、誰もが皆彼らと同じ考えで、誰も彼らの世界観に異論を唱えない国のことだ。

 これこそが、ドナルド・トランプを大統領に選んだ恐怖と無知の文化だ。それはトランプが選出されてから、公に顔を見せても平気になったナチス党員のような人々や、人種差別主義者が見せる偏見と憎悪の文化だ。共和党員になるために偏屈者になる必要はないが、偏屈者たちと一緒にされても構わないと思える必要はある。共和党は宗教の背後にある偏見を隠した、ただの偏見者の集まりだとは言い切れないだろうが、 偏屈者たちから積極的に票を得ようと努める組織であることは間違いない。

 トランプは、アメリカ人の価値観に対して、新しく、かつ非道で無礼なこと思いつく無限の能力を持っている。それにも関わらず、共和党の政治家たちが 疑う余地がないほど完全なるトランプ支持を続けることを強いることも、同じような腐敗である。これに対して、連邦議会のすべての共和党員が見て見ぬふりをしているのは、トランプが既に連邦最高裁判所に保守的な裁判官を一人、任命しているからだろう。その上、トランプが大統領職から去る前に、あと一人か二人の裁判官を任命できるかもしれないとも考えているはずだ。

 最高裁判所への任命は、生涯続く。従って、トランプによる最高裁裁判官の任命が、アメリカにおける裁判所の判断を根本的に変化させ、あらゆる世代の判決を逆行する結果にもなりうるわけだ。共和党にとっての本当の褒美とは、大統領を得たことではなく、保守的な最高裁の裁判官が任命されたことである。さらにあと二人、トランプが最高裁裁判官を任命したら、共和党は「ゲイお断り」という憲法を作ろうとさえするかもしれない。

シアトルを逃げ出したゲイのパパ友たち

https://bizseeds.net/articles/689

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが「アメリカ」を語る。すべての性的マイノリティーたちが、リベラル主義という訳ではない。リベラルに嫌気がさして引っ越しまでするゲイたちもいるのだ。

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この記事の寄稿者

1974年生まれ。文学書とコーヒーを愛するコラムニスト。書籍に関しては幅広く読むが、コーヒーに関しては、豆の原産地から流通や焙煎の過程までを詳細にフォローし、納得したものだけを味わうことにしている。温厚で穏やかな性格であるものの、コーヒー豆へのこだわりと同様に理路整然としない、あるいは納得できない社会の動きに対しては、牙をむく活動派的な一面もある。妻と犬一匹と共に、カリフォルニア州オークランド在住。

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