【Red vs. Blue】トランプ大統領「不法入国者は米裁判抜きで即送還せよ」?!

【Red vs. Blue】トランプ大統領「不法入国者は米裁判抜きで即送還せよ」?!

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は、両者の意見が大きく異なるからだ。当連載では、アメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人に見解を披露してもらい、その相違点を読み比べる。今回はトランプ大統領の「不法入国者は即刻強制送還するべき」発言について。


 不法に国境を越えようとした移民の親子を引き離す「ゼロ寛容」政策が国内外から批判を浴び、先月20日にこれを撤回したばかりのトランプ米大統領が25日、不法入国の疑いで拘束された外国人について、「刑事裁判にかけず強制送還すべき」だとコメント。ホワイトハウスは、司法手続きを経ない強制送還は合法との認識を示している。

 親子を一緒に収容した場合、移民の子供の収容を20日までと定める米国法に抵触するため、裁判の迅速化が求められる中、裁判官の拡充にも限界があり、難民申請などで裁判が長期化することが問題視されている。

 同大統領はツイッターで、「我国が侵略されるのを許してはいけない。誰かが入ってきたら裁判官や裁判所抜きで、すぐに元の場所に帰さなければならない(中略)。世界中から笑いものにされている現在の移民政策は、合法的に移民した人たちや、何年も順番待ちをしている人たちにとって非常に不公平だ。移民は利益に基づいていなければならない。米国を再び強くするのを助けてくれる人を求めている!」と投稿。これについて法律専門家や人権保護団体は、米憲法の下での適正手続きの規定に違反することになると批判している。

出典: NBCニュース
President Trump Calls for Undocumented Immigrants to be Deported With
'No Judges or Court Cases'

【RED: 保守派】国外追放でプロセスが迅速になるが、リベラルはそれに耐えられない

Deportations are about to get a whole lot faster—and the liberal media can’t stand it

 不法入国者を彼らの国に即送還することは、彼らから自由を奪うものではなく、米合衆国憲法修正第14条の「デュープロセス」条項(「適正手続きの保障」のこと。適正手続なしに個人の財産等を奪ってはならないといもの)を違反していない。

 アメリカの左翼メディアは世界に対して、まるで不法入国者たちが裁判所に訴える権利が与えられていると信じさせたいようだが、実際、アメリカへの入国を拒否された人々にそれは当てはまらない。それが違法であることを知っていながら、米メキシコ間の国境を不法に越える目的を持ってやって来た人々(そのほとんどが中米から)は、「不法移民」(ビザなどの正式書類を所持しない米在留者)ではなく、「合法に国境を超えなかった犯罪者」として国境で留置されている状態の人々だからだ。

 憲法第14条の「デュープロセス」条項を適用するためには、対象者は米国内に居て、そこでその人の人生・所有物・自由が侵害された状況でなければならない。国境は州ではなく、あくまで二つの国の「境」である。国境に隣接するカリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、テキサス州の法執行機関の任務は、国境を管理コントロールすることではない。国境は米国土安全保障省下の米国税関国境警備局の管轄だ。だからその管轄において、憲法第14条の司法権は無効なのである。

 さらに付け加えると、トランプ大統領が言ったように、もし国境を不法に越えようして収監された大群が自国へ即送還されれば、彼らの個人的な自由が米政府によって奪われることはない。よって大統領は職権を使って即送還策を促進するべきだ。もし、それに対して法的に待ったがかかったとしても、大統領によって既にアウトラインが描かれた米最高裁において、結果的に支持されることだろう。

【Blue:リベラル派】他国を侮辱しても自国だけは特別だと考える米国

Don't worry! You're from one of the good countries. For now.

 アメリカは移民によって建国された。海を渡ってやって来た白人は大勢の原住民を殺して、その土地を強引に奪い取り、アフリカから奴隷を連れて来て強制的に働かせた。貧困や飢饉、宗教的迫害から逃れるために、アイルランドや英国、欧州全域から大勢の白人がアメリカへ来たが、自由になりたいと願って来た彼らに対する移住の条件は何もなかった。

 中国人が鉄道建設を手伝いに来たが、白人は中国人の人数が多すぎると言って彼らを国に帰す法律を作った。白人は自分たちにとって良い国と悪い国を選び、悪いとされた国から来た人たちを差別した。黒人奴隷解放後も黒人と白人は一緒に食事をすることすら許されず、第二次世界大戦中にはアメリカ国籍を持つ日系人を強制収容した。

 その後、物事が変わった。黒人が白人と同じ学校に通うことが許され、メキシコや南米から来た人々が農村地へ移り住んで働くようになり、アメリカで市長や消防士や医者になった。中東から来た医者がアメリカ人の医者が好まない過疎地で働き、中国やインドから来た人たちがアマゾンドットコムやツイッターの技術開発を助けた。外国人の力を借りて作られたツイッターを、トランプ大統領も日々無料で使用し、世界に向かって「外国人がいかにひどいか」を訴えている。

 この“アメリカ的な実験“は、うまく行っていたように見えたかも知れないが、実際には何もうまく行っていない。この国には外国人には来て欲しくないと考える人が大勢いて、彼らは外国人のように見える住民(白人ではない人たち)が嫌いなだけでなく、他国のことには(レストランのメニュー以外は)まったく興味がない。トランプが権力を持った途端、そんな彼らの思想は会話の域を超えて、政策になった。メキシコや南米からの移民を受け入れるか否かではなく、彼らの子供たちを取り上げ、何週間も何カ月も収容施設に入れる。今後は難民申請の訴えも聞かず、彼らを国へ追い返すかも知れない。トランプ政権は、我々アメリカ人の祖先が100年や200年前にやったことと同じことをしようとしているメキシコや南米からの移民のことを犯罪者だという。信じられないことに、トランプは彼らのことをこうも言った。「they are not people, and the law should not protect them. (彼らは人ではない。法は彼らを守るべきではない)」。

 こんな状況下にもかかわらず、最近の世論調査で「アメリカ人の大半は隣国カナダとメキシコで歓迎されると考えている」という結果が出た。こんな国が、本当に我々が望む国なのか? どうかしている。自分たちは隣国の人々の権利を取り上げてアニマル呼ばわりしているのに、自分が隣国に行くときは自分の権利を掲げるアメリカという国。他国の人々のことを「「they are not people(彼は人ではない)」などと言ってしまう「我々」アメリカは、「我々だけは問題ないのだ」という独りよがりな幻想に今、危険なほど近づいている。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

関連する投稿


アメリカの有権者、中間選挙でトランプと共和党による一党政権を拒否

アメリカの有権者、中間選挙でトランプと共和党による一党政権を拒否

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。中間選挙では民主党が躍進して下院を奪回したが、上院が共和党支配のままでは民主党の出来ることは限られている。確実に一歩前進したリベラル派だが、その先に続く道は険しそうだ。


【11/12追記あり】大統領よりも重要!?「最高判事」でアメリカが変わる

【11/12追記あり】大統領よりも重要!?「最高判事」でアメリカが変わる

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。中間選挙が終わるや否や、アメリカ中が危惧する問題が勃発。大統領より時に重要で、国を揺るがしかねない最高判事問題とは?


中間選挙の結果がトランプ再選にとって好都合なワケ

中間選挙の結果がトランプ再選にとって好都合なワケ

テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。先日の米中間選挙で、トランプ率いる共和党は下院の過半数を民主党に取り返されてしまったが、保守派たちは「この方がトランプ再選に向けて好都合だ」と思っているのだ。


米消費者調査の結果が対極! 保守とリベラルは好きな商品まで異なる

米消費者調査の結果が対極! 保守とリベラルは好きな商品まで異なる

米中間選挙を目前にして、先日発表されたリサーチ機関シモンズによる「アメリカ消費者スタディー2018年冬編」の調査結果を米各紙が取り上げている。アメリカが抱える移民や国民健康保険の問題から地球温暖化まで、ことごとく意見が分かれる保守派とリベラル派だが、食品や洋服のブランドまで二者の好みが極端に異なることが分かった。


米中間選挙:今回は選挙に行く! 勢いづくアメリカの若者たち

米中間選挙:今回は選挙に行く! 勢いづくアメリカの若者たち

米中間選挙まで、あとわずか。 この選挙は米上院下院議員を選出するもので、この結果により議会の与党と野党が入れ替わる可能性があるが、4年に一度の大統領選に比べると中間選挙の得票率は低いのが通常だ。しかし、今回の中間選挙には、普段は投票しない大勢の若者たちが「投票しよう!」と立ち上がる動きが広がっていることが注目されている。






最新の投稿


パソコンを使えない日本のサイバー戦略担当閣僚、欧米で大ウケ!

パソコンを使えない日本のサイバー戦略担当閣僚、欧米で大ウケ!

日本政府のサイバーセキュリティー戦略を担当する桜田義孝五輪相が、「自分でパソコンを打ったことがない」ことや「USBを知らない」と報道した日本のニュースを、欧米の大手新聞各紙やウエブメディアが一斉に取り上げ、反響を呼んでいる。アメリカでは各紙の同記事がSNSで拡散され、様々な声が寄せられた。その一部を紹介しよう。


アメリカの有権者、中間選挙でトランプと共和党による一党政権を拒否

アメリカの有権者、中間選挙でトランプと共和党による一党政権を拒否

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。中間選挙では民主党が躍進して下院を奪回したが、上院が共和党支配のままでは民主党の出来ることは限られている。確実に一歩前進したリベラル派だが、その先に続く道は険しそうだ。


成功への選択「新調したマフラー」2018年11月16日~11月22日

成功への選択「新調したマフラー」2018年11月16日~11月22日

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが送る「成功への選択」。算命学、数秘術、占星術などをベースにしたオリジナル手法を用いて、あなたが切り開くべき幸運への扉のヒントを毎週アドバイスします。さて、あなたのビジネスを成功に導くのは、どちらの選択肢でしょうか?


えっ、そこ? アマゾン第2本社、NY市とワシントンDC近郊に決定

えっ、そこ? アマゾン第2本社、NY市とワシントンDC近郊に決定

米アマゾン・ドットコム社の「第2本社」が、ニューヨーク市とワシントンDC近郊アーリントンの二拠点となることが発表された。昨年開始された「アマゾン誘致合戦」の結果は、アメリカに新しい大都市が誕生することを期待していた多くの企業や地域関係者を落胆させたが、同社はこの決定により、さらに成長の加速度を増しそうだ。


シアトルのホームレス人口はなぜ減らない?

シアトルのホームレス人口はなぜ減らない?

アメリカ生活20年を過ぎた翻訳家の高柳準が、アメリカの文化とそれにまつわる矛盾を語る「アメリカで暮らしながら想うこと」。今回は多くの画期的な解決策が提示される「ホームレス問題」の中で、「この解決策ってどうなの?」という疑問が沸いてしまうような対策案について、リベラルな著者ならではの視点をまとめてみた。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング