トランプが世界に仕掛ける無謀な経済戦争

トランプが世界に仕掛ける無謀な経済戦争

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回はトランプの支持者が多い、オートバイのハーレーダビッドソン社が海外へ移転せざるをえない結果を作ったトランプ大統領が、同社を攻撃している矛盾について。


トランプはやってもいいが、ハーレーはダメという屁理屈

 アメリカの象徴ともいわれてきたオートバイ会社、ハーレーダビッドソンが、欧州連合(EU)で販売するオートバイにかけられる大幅な輸入関税を回避するため、一部の生産を海外へ移転することを発表した。この新しい関税は、ドナルド・トランプが欧州と多くのアメリカ友好国から輸入されるアルミニウムとスチールにかける関税の引き上げを決定したことへの対抗措置として課せられたもの。あたかも、トランプによる世界貿易戦争の第1ラウンドというような様相だ。

 知性ある経済専門家の誰もが、国際貿易戦争は皆に経済的損害を引き起こすことを知っている。しかし、トランプは専門家よりも自分の方がよくわかっていると思っている。実際、彼は「貿易戦争に勝つのは簡単だ」とさえ発言している。頭の悪いアメリカの有権者たちが、品がなく節操もなく嘘つきで弱い者いじめをする男に投票してホワイトハウスに送り込んだために、アメリカと世界は、またひとつ、実害を被ることになりそうだ。

 大統領選挙前、トランプは自分の納税申告書を公開することを拒否した。ヒラリー・クリントンは、「彼が公開を拒否するのは、税金のシステムの抜け穴を使って国を欺き、連邦税を全く払っていなかったことをアメリカ国民に知られたくないからだ」と示唆したが、彼女の主張に対し、トランプは「それは私が賢いという証明だ」と反応した。

 しかし、ハーレーダビッドソンが自らの収益性を守るために、合法的かつ不必要な税金を払わないと決めたときには、トランプ大統領は前述の発言を翻した。ハーレーダビッドソンの決定のせいで、私の顔は丸潰れだと言い、彼がそういう風に感じた時にいつもするように、同社に対しての攻撃を開始した。トランプは、ハーレーダビッドソンの株価が下がることを知りながら侮辱的な発言を繰り返した。もし、ハーレーダビッドソンが海外に生産拠点を移動したら、これまでになかったような税金を同社に課すという脅しまでした。トランプは、いつでも自身のことだけを気にしている。だから、ハーレーダビッドソンの発表は、自分に対する個人的侮辱だとしか見ることができないのだ。テレビのインタビューでは、「今までにハーレーダビッドソンを買った人は、全員、私に投票したと保証する」とまで言ったこの男は、明らかに戯言を垂れ流し続けるおしゃべり病を超えて、深刻な精神的問題を抱えていると思う。

なぜ、多くのアメリカ人が今もトランプを支援するのか?

 なぜ、これほど多くのアメリカ人がトランプに投票し、今だに彼を支援し続けるのか? 支持者たちの多くは、「トランプはアメリカにとって良いビジネス取引ができる、熟練したビジネスマンだ」と言うが、彼らはトランプが世界の舞台で良い取引をすることができるほど洗練されてはいないことに気づかない。

 これまでに成功したトランプ流の取引には、不正行為と取引相手を巧みに利用することが伴っている。例えば、これまでトランプが行なった例はお粗末なものも実に多い。まずベンチャー企業のためにお金を借り、そのビジネスが機能しなくなるようにする。その間、彼と家族に多額の給料を払う。最終的にはそのビジネスを倒産させるか、債務の条件を再交渉する。そうすることにより、彼が返済しなければならない金額はものすごく低くなるというようなものが、その代表だろう。別の例をあげると、彼の不動産物件の建設にあえて小さな企業と契約し、その仕事の終了後に支払いを拒否する。彼は、その小さな企業が長期で高額な裁判を戦っていく資金がないことを知っているから、裁判にならずに自分の不正行為から逃れることができる。つまりトランプにとって、成功したビジネスの契約とは、「自分が勝ち、相手が負ける」ということだけなのだ。

 このアプローチ法は、政治や経済の「世界の舞台」では通用しない。なぜなら、いつも同じ国々が互いに交渉しているからだ。もし、ある国が他国に対して不当な優位性を取ったり、不誠実に交渉した時には、次にその国と契約をしなければならない時、自分たちの国も同じような状況に追い込まれてしまう。世界の舞台での交渉は、戦略的提携を検討する能力と、双方に利益のある取引、つまり「Win-Winの取引」をするための素養が必要とされる。トランプには、そのような素養がないのだ。そして、彼の判断力の欠如は、事実上、何十年も不当にアメリカに有利になるように傾いていた世界の経済システムを破壊している。

 トランプの支援者たちは、今だに「アメリカを再び偉大な国にしよう」と書かれた帽子をかぶって、トランプを応援している。もし、僕のようなリベラル派が動揺していたら、「トランプは何か正しいことをしているに違いない」と、彼らは考えているからだ。

トランプより優れた大統領候補の登場か?

https://bizseeds.net/articles/727

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住で、トランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今秋に行われる中間選挙を前に、現政権に対立する民主党はもとより、共和党内でもトランプに異を唱える政治家が出はじめている。そんな共和党候補者を、リベラルはどう見ているのか。

この記事の寄稿者

1974年生まれ。文学書とコーヒーを愛するコラムニスト。書籍に関しては幅広く読むが、コーヒーに関しては、豆の原産地から流通や焙煎の過程までを詳細にフォローし、納得したものだけを味わうことにしている。温厚で穏やかな性格であるものの、コーヒー豆へのこだわりと同様に理路整然としない、あるいは納得できない社会の動きに対しては、牙をむく活動派的な一面もある。妻と犬一匹と共に、カリフォルニア州オークランド在住。

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