リベラルでも賛同しかねる、行き過ぎ人道支援

リベラルでも賛同しかねる、行き過ぎ人道支援

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。シアトル市議会が大企業向けの新税をたった1カ月で撤回。リベラルでもうんざりするような「行き過ぎた人助け」の実態とは?


アマゾンがシアトル市に突き付けた「NO」

 アメリカに住んでいる以上、政治に「無関心」などとは言ってはいられない。よくよく吟味して政治家を議会に送り出さないと、望ましくない「おかしな税金」を払わされることにもなりかねないからだ。

 そんな「おかしな税金」のひとつである人頭税が、シアトル市議会で可決されたのは今年5月14日のこと。ホームレス急増に伴う住宅確保を目的としたもので、シアトル市内にある企業のうち、年間売り上げ2,000万ドル以上の企業が対象だった。納税対象は在シアトル企業の約3%。アマゾン・ドットコム、スターバックス、マイクロソフトといった大手企業がこれに該当していた。

 これらの企業は社員1人に対し、年間275ドルを納めねばならないという税金だったが、これに猛反撃したのはアマゾンだった。アマゾンはシアトル市内に45,000人の社員を抱えている。この数に人頭税を掛けられたら、たまったものではない。私の経営する会社も地元なので、アマゾンとの付き合いはある。知り合いや友人にもアマゾンで働いている人は大勢いるため、この税金が可決された途端、方々から導入撤回への署名を頼まれた。

 もっとも今回は同社経営陣も強硬手段に出た。市内に建設予定されていた新社屋の建設中止、すでに賃貸済のビルもサブリースに回し、人をシアトルで増やさない方針を発表したのだった。

年収2,000万円でも貧乏人?

 署名を頼みにきたひとりは、リベラル主義でホームレス救済のボランティアにも熱心な人だ。しかし、そんな彼女でさえ、「ホームレスや不法移民を手放しで助けることが、リベラルの絶対正義という見られ方は気分が悪くなる」と話していた。

 彼女はもともとシリコンバレーの出身だ。当時の年収は日本円にして2,000万円以上あったが、住宅が高すぎることに加え、次々に可決されていく税金によって、生活は常に苦しかったと言う。嫌気がさしてシアトルへ引っ越してきたが、カリフォルニア州を追随する勢いでシアトルが人道政策のために一般人に課税をしまくる様子をみて、「次はアイダホ州にでも引っ越そうかな」と苦笑いしていた。

 ちなみにアマゾンの猛反撃が功を奏し、シアトルの人頭税は1カ月あまりで撤回された。これにより、アマゾンの新社屋では約7,000人の雇用が新たに生まれる。しかし同時に、シアトルはさらなる住宅難に陥るだろうし、ホームレスの数はますます増えるだろう。シアトルの未来はどこへ向かっていくのだろうか?

この記事の寄稿者

青山学院大学卒業。コマーシャルなどの映像コーディネーターを経て1998 年、宝塚歌劇団香港公演の制作に参加。その後プロデューサーに転身。株式会社MJ コンテスほか複数企業の代表として、ネバダ州立大学公認のピラティススタジオ日本進出事業や各種研修事業、2007 年に行われた松任谷由実の 「ユーミン・スペクタクル シャングリラⅢ」をはじめとする国内外の舞台・イベント制作など、さまざまな事業を展開。これまでにベストセラー数冊を含む70以上の書籍、DVD 作品を企画、プロデュース。現在も様々な事業を展開しながら“Go Tiny”(大切なものが、すべて半径5メートル以内にあることに気づこう!の意)というライフスタイルの提案も展開中。

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