【Red vs. Blue】トランプ大統領とイーロン・マスクは似ている?

【Red vs. Blue】トランプ大統領とイーロン・マスクは似ている?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露。今回は、『フォーブス』誌が掲載した、トランプ大統領とイーロン・マスクの類似点をあげた記事を読んだ両者の意見を聞く。


 経済誌『フォーブス』に、トランプ大統領と実業家のイーロン・マスク両氏について、「およそ共通点などありそうにない2人には、類似点がある」という指摘をしたコラムが掲載された。

 電気自動車メーカー、テスラの最高経営者(CEO)のマスク氏は若くてクールでリベラル。一方のトランプ大統領は高齢で、変わった髪型をしたニューヨーク出身の不動産王で、保守派共和党の代表だ。同コラムの筆者、自動車業界専門ジャーナリストのドロン・レビン氏は、この2人には自動車業界と政界において、かつての慣習を次々と破り、過激な言動をとるという類似点があると説明。そして、型破りな大統領が、嫌が応でも米政治に大きな影響を及ぼしているのと同様に、マスク氏も自動車業界に影響を及ぼしているというが、アメリカの保守派とリベラル派の一般人は、これに賛成するだろうか?

出典:『Forbes』
Elon Musk And Donald Trump Are, In Their Own Disruptive Spheres, Birds Of A Feather

【RED: 保守派】マスクの言動はトランプと何の共通点もない!

Elon Musk’s behavior has nothing to do with Donald Trump

 トランプ大統領の出現は、おそらくアメリカの文化的景観のあらゆる側面を支配している、半世紀に一度あるかないかの政治的現象と言えるだろう。この記事は、物議をかもすものなら何でもトランプ大統領と関連づけようとしているようだが、読者がそれを読んで信じると思っているのだろうか。

 事実をおさらいしてみよう。イーロン・マスクは2003年にテスラ・モーターズを設立した。米国の納税者が自動車1台につき7,500ドルもの助成金を支給しているにもかかわらず、同社は現在120億ドル以上の負債を抱えており、未だに利益を上げていない。マスクは莫大な金を失っており、メディアは彼のビジネス戦略と会社の財務存続の可能性に疑問を呈し、マスクの広報活動とソーシャルメディアの活用を批判している。同誌によれば、イーロン・マスクは論争の人だ。そしてトランプ大統領も、彼が何をしようがすまいが、左派メディアには論争の人と捉えられている。だから記事では二人は似ていると言っているわけだ。

 トランプ大統領は確かに時としてメディアと議会の両方と激しく対立する。しかし、その事実だけで、アメリカ大統領を、何かと対立する他の人間と関連づけることはできない。 マスクの言動がメディアに取り上げられる理由は、「政府の支援なしに独り立ちできる商業的に成功した電気自動車会社」をまだ実現できていない自動車業界の巨人の苦闘を反映しているにすぎない。一方トランプ大統領は大統領なのだ。一国の主として、就任以来、メディアの注目と関心が集まるのは当然でもある。トランプ大統領が関係すれば何でも話題になるから、この二人が似ているという記事を出すとは、まったくバカげた話だ。

【Blue:リベラル派】アメリカはトランプの会社ではない

The USA is Not Trump Incorporated

 産業に変革を持ち込む者は、その産業を活性化させたり、あるいは復活させたり、時には破壊したり、破滅させたりする。産業破壊が良いか悪いかは、しばしば意見が分かれるが、例えば、ウーバー(Uber)は、タクシー産業のあり方を根底から覆し、従来のタクシー業界に混乱を巻き起こした。しかし、ウーバーの成功は同時にタクシー会社に対し、タクシー免許を維持するために頭を悩ませるのではなく、顧客獲得の競争力を維持するために、近代化と業務改善を強いることにもなった。業界に変革が起こると、その結果、ほとんど常にイノベーションがもたらされる。

 トランプは実業家であり、荒々しい個性を持っているが、この2点のみがマスクとトランプの間で比較できる特徴だ。マスクは電気自動車において革新と消費者需要の増加をもたらし、高速旅客輸送と宇宙探査においても業績がある。一方でトランプは、企業のように国を運営してアメリカを向上させると主張しているが、「政治はビジネスではない」ということを誰もまだ彼に伝えていないようだ。確かに、政府には予算があり職員がいるが、「政府の責任」は、会社の社長の責任とは非常に異なるものだ。民間のビジネスであれば、その主な目的は富を作り出すことにあるが、政府のそれは、人々に奉仕することにある。そして時には、政府がビジネスの利益を妨げることをしなければならないこともある。例えば、週の労働時間を制限したり、最低賃金を義務付けたりするように。

 これまでのトランプを見る限り、彼はアメリカの国民に奉仕することには関心がない。彼の政権は、医療制度の改善を試みないだけでなく、医療保険のコストはさらに上がり、彼の就任以降、健康保険市場はまったく安定しない。トランプのビジネス諮問委員会は、何も成就しないまま昨年解散した。トランプが使う大好きな言葉である「失敗」が当てはまる業界があるとしたら、それは石炭業界だ。しかし、トランプは石炭業界を鼓舞し、アメリカのハイテク企業を攻撃している。トランプのアメリカの関税同盟国への脅しは何も成し遂げておらず、単にアメリカ人が輸入品に対して支払う価格を引き上げ、アメリカの製造業者に不安定をもたらしただけだ。彼の政権は石油、石炭、化学製品生産者の利益のために、環境保護の規則と、労働者を搾取から保護するための規則を取り除くのに忙しい。

 トランプが破壊しているのは、アメリカ政府の想像上のビジネスモデルではなく、アメリカ人の生活の安定だ。トランプがアメリカという国を「ビジネスのように」運営しているのであれば、賢明な投資家が賭け続けられるものに投資をするように、国を運営するだろうが、彼はアメリカを破産に追い込んでいるだけである。

 では、2020年にはマスクを大統領に推すべきだろうか? その可能性はあるだろう————すでにもっと悪い選択をした後なのだから。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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