「宇宙軍」創設!? 中間選挙へ向けたトランプの新戦略

「宇宙軍」創設!? 中間選挙へ向けたトランプの新戦略

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は、トランプ政権が「米軍に新しく宇宙軍(Space Force)を加える」と提案したことについて。この提案に湧くトランプ支持者たちを、リベラル派の著者はどう見るか?


トランプは自身のサポーターが喜ぶアイデアを発言する

 ドナルド・トランプは、今年3月に米海兵隊へのスピーチを行った際、米軍の新しい部門として「宇宙軍」(Space Force)を創設すると発言した。彼が真剣なのか、それとも、いつものように心の中にある欲望をコントロールできず、とりあえず言っているだけなのかが確かではなかった。だが、それ以来、彼は各所でのスピーチ、ツイッター、インタビューなどで「宇宙軍」について何度も言及し、彼のサポーターはそのアイデアを歓迎した。

 ドナルド・トランプは良い評価を欲しがる。まるで幼児のように、人からの承認と賞賛を強く望んでいる。だから、トランプがいつも最優先にすることは、彼のサポーターが「聞きたいこと」を発言することだ。

 慣例上、アメリカ大統領は大統領に選出されたら選挙キャンペーンをやめる。彼らは「国を統治すること」のために時間を使うことを選ぶからだ。しかし、トランプは従来の大統領とは違う。彼は広いアメリカの中でも強いサポートが得られる地域を選んで、定期的なキャンペーン集会の開催を今も続けている。多くの熱狂的なファンの前に立っている時のトランプは、自己満足そのものの表情を見せる。彼は自分にいかに知性があるか、自分のアイデアがどんなに素晴らしいかをファンに向かって熱弁し、自分をサポートすることがどんなに賢いことかをファンに伝える。そのお返しに、ファンは彼に熱狂的な歓声と拍手を贈るのだ。

 最近、こういうキャンペーン集会で、トランプが米軍について言及すると、彼のサポーターたちは、「宇宙軍! 宇宙軍! 宇宙軍!」と叫び始める。先日、トランプ内閣が、宇宙軍を創設する計画を正式発表した。彼らは宇宙軍を既存の陸軍、海軍、空軍、海兵隊と沿岸警備隊と同等で、独立した6番目の軍にしたいと考えており、宇宙での戦闘専用軍にしたいそうだ。

これは「常識」との戦いだ

 しかし、アメリカ大統領が米軍に新しい軍を作りたいと言っても、連邦議会の承認がなければ作ることはできない。多くの議員や軍人たちのトップクラスは、宇宙軍の創設に反対している。よって宇宙軍は創設されないかもしれないが、そんなことは「トランプの再選キャンペーン」には関係ない。すでに、宇宙軍のアイデアにサポーターは湧いているのだから。トランプ再選キャンペーンがサポーターに送った最近のeメールでは、「宇宙軍のロゴをトランプ再選キャンペーンで販売するため」に、センスの悪い宇宙軍の6種類のロゴ・デザインのうちのひとつに投票することを呼びかけ、投票後には再選キャンペーンへの寄付を求めた。トランプにとって、これは個人的な利益を得るための別のチャンスでもあるのだ。

 アメリカには宇宙軍が必要なのだろうか? そうなのかもしれない。中国とロシアは宇宙での軍事資産を増やしている。それはアメリカも同じだ。米軍は通信や監視、位置情報などのために人工衛星に大きく依存しており、米空軍だけでも衛星の打ち上げや宇宙システムの開発のために、8.5億ドル(約9,435億円)の予算を持っている。 アメリカがこれらの宇宙資産をさらに開発・保護し、戦争が起こった場合には他国の宇宙資産を無効にするために、多額の投資をしていないと考えるのは、バカげている。

 米軍内に新しく独立した宇宙軍を作ることは、良いアイデアなのかもしれないし、軍全体の効果が下がり、不必要な官僚を増やすだけなのかもしれない。しかし、今アメリカが議論している内容は、それではない。

 私達はまたしても、馴染みのパターンにおちいっているのだ。トランプは「何となくいい感じがする」という理由だけで、ひとつのアイデアを奨励し、彼のサポーターは、それを応援する。トランプも彼のサポーターも、事実や実用的な考慮事項には全く興味がないが、「宇宙軍」という響きは、トランプ・サポーターにとっては宇宙船やレーザー銃と同じように非常に魅力的だ。だから、彼らはトランプに歓声を送り続け、馬鹿げたロゴに投票し、トランプからの「市民として素晴らしい義務を果たした」との賞賛を受け入れるのである。

 アメリカ国民は、トランプに力を貸す共和党から議会の支配権を奪い返すために、何としても中間選挙で民主党員を選出する必要がある。それができなければ、アメリカにおける建設的な対話や良識ある政策は、共和党によってトランプの子供じみた漫画のような理想主義へ恒久的に代替されてしまうだろう。

この記事の寄稿者

1974年生まれ。文学書とコーヒーを愛するコラムニスト。書籍に関しては幅広く読むが、コーヒーに関しては、豆の原産地から流通や焙煎の過程までを詳細にフォローし、納得したものだけを味わうことにしている。温厚で穏やかな性格であるものの、コーヒー豆へのこだわりと同様に理路整然としない、あるいは納得できない社会の動きに対しては、牙をむく活動派的な一面もある。妻と犬一匹と共に、カリフォルニア州オークランド在住。

関連する投稿


アメリカの本当の顔とは?

アメリカの本当の顔とは?

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は、時代の変化に柔軟性のない共和党(保守)に対して、民主党(リベラル)がいかにそうした変化を受け入れて柔軟であるかを軸に、アメリカのあるべき今後の姿について語る。


2019年、「狂気vs正気」アメリカはどこへ?

2019年、「狂気vs正気」アメリカはどこへ?

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。2019年は米大統領選挙の前年。次期大統領候補者についての話題が増えるのは必須だ。ますます国の分断が進みそうな予感だが……?


パーティーを盛り上げるゲームの主役はトランプ大統領?!

パーティーを盛り上げるゲームの主役はトランプ大統領?!

アメリカではホリデーシーズンに集まる親族や友人たちと食後のテーブルを囲んでボードゲームを楽しむことが多い。デジタル化が進んだ今でもその需要は高いが、世相を表すものは特に人気がある。そんな中、特に注目されているトランプ大統領関連ゲームを紹介しよう。


年の瀬に「真の多様性」を考える

年の瀬に「真の多様性」を考える

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。中間選挙の影響もあり、リベラルと保守の対立を感じるニュースが目立った今年。しかし年の瀬は真のアメリカの良さを感じることも。


共和党の民意無視がアメリカを蝕む

共和党の民意無視がアメリカを蝕む

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は、先の中間選挙で共和党州から民主党州に変わった州の現知事が、退任前に新しく就任する知事の権力を制限する法律を制定しようとする動きについて、著者の憤慨をまとめた。






最新の投稿


成功への選択「入浴剤」2019年1月18日~1月24日

成功への選択「入浴剤」2019年1月18日~1月24日

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが送る「成功への選択」。算命学、数秘術、占星術などをベースにしたオリジナル手法を用いて、あなたが切り開くべき幸運への扉のヒントを毎週アドバイスします。さて、あなたのビジネスを成功に導くのは、どちらの選択肢でしょうか?


アメリカの本当の顔とは?

アメリカの本当の顔とは?

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は、時代の変化に柔軟性のない共和党(保守)に対して、民主党(リベラル)がいかにそうした変化を受け入れて柔軟であるかを軸に、アメリカのあるべき今後の姿について語る。


誰でもシルク・ドゥ・ソレイユに挑戦できる! ラスベガスで新体験

誰でもシルク・ドゥ・ソレイユに挑戦できる! ラスベガスで新体験

エンターテインメントの街、ラスベガスは、カナダに本拠地のあるシルク・ドゥ・ソレイユのアメリカ拠点としても知られている。現在ラスベガスでは6つのショーが上演されているが、その本場の舞台に出演中の日本人パフォーマーが、新しいビジネスをスタートさせた。ラスベガス旅行を計画している人には特に注目の新情報だ。


あれから1年、#MeToo はどうなった?

あれから1年、#MeToo はどうなった?

アメリカ生活20年強。翻訳家の高柳準が、アメリカ文化とそれにまつわる矛盾を語る「アメリカで暮らしながら想うこと」。今回はハリウッド界に端を発する「#MeToo」について。女性差別問題は根深く、複雑化しやすい。性別や文化により、セクハラと性犯罪の違いに対する意識の違いを浮き彫りにしたこの運動、あれからどうなったのだろう?


アメリカ版の福袋? 女子力アップの「サブスクリプション・ボックス」

アメリカ版の福袋? 女子力アップの「サブスクリプション・ボックス」

日本の1月の風物詩のひとつである「福袋」。今年も85,000円もする「ジャイアント馬場福袋」があっという間に完売したり、新たな出会いを願う人のための「婚活福袋」が登場したりと世間を賑わせたが、アメリカにも福袋の発想に近い商品がある。それは若い女性を中心に人気を博している「サブスクリプション・ボックス」だ。その箱の中身とは?


アクセスランキング


>>総合人気ランキング