【Red vs. Blue】トランプ支持者が「大統領は腐敗していない」と信じるのはなぜか?

【Red vs. Blue】トランプ支持者が「大統領は腐敗していない」と信じるのはなぜか?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回はトランプ大統領の元顧問弁護士が「大統領が不倫相手に口止め料を支払った」と認めたことを巡って激論を交わす。


 8月22日、トランプ大統領の元顧問弁護士、マイケル・コーエン氏は米連邦地裁と司法取引をし、2016年に当時大統領候補だったトランプ氏の指示により、「大統領選挙に影響を与えるため、不倫相手の女性に口止め料を支払った」と証言した。
 大統領の選挙違反にも繋がると、米国各メディアは大きく報道しているが、右派系最大のテレビ局Foxは、コーエン氏の告白には全く触れず、同日に発覚したメキシコ不法移民がアメリカ白人女性を殺害した事件にフォーカスし、移民政策問題として報道した。

 これを受けて『The Atlantic』誌は、大統領選挙運動中はクリントン候補者の「道徳的腐敗」を激しく非難していたトランプ支持者たちの矛盾を指摘。それが選挙違反に関連していてもトランプ大統領の浮気については「腐敗」とは捉えず、不法移民による白人女性殺害は、白人優位の伝統的価値観から見て許しがたい事件となると報じた。それに対するアメリカ人保守派とリベラル派の見解はいかに。

出典:『The Atlantic』
Why Trump Supporters Believe He Is Not Corrupt
https://www.theatlantic.com/politics/archive/2018/08/what-trumps-supporters-think-of-corruption/568147/

【RED: 保守派】『The Atlantic』誌はアメリカを全く理解していない

The Atlantic simply does not understand America

 『The Atlantic』誌のこの記者はトランプ嫌いの左派であり、人々は彼のように考えることが正しいと考えているようだ。彼は記事の中で、下記のような3つの証拠を提示することで、その事実を隠そうとしている。

 その1:Foxニュースは、トランプ大統領の元弁護士マイケル・コーエンが脱税訴訟に関して司法取引をしたことを取り上げる代わりに、アイオワの田舎で不法移民が20歳の女性を無残に殺害したセンセーショナルなニュースを取り上げた。

 その2:トランプと彼の支持者は、腐敗の定義をファシスト政治家による腐敗の定義と同様に捉えている。従ってトランプと彼の支持者はファシストである。

 その3:トランプ支持者は伝統的なアメリカの価値観を信じるが故に、アメリカの価値観の王者である大統領のいかなる腐敗した行為をも容認する。

 要点をまとめると、トランプ支持者は、大統領の弁護士が脱税容疑において司法取引をしたことよりも、20歳の白人女性の殺害事件を気にかけ、ファシストで、アメリカの伝統的価値観を擁護する同大統領の腐敗した行為を容認するということになる。

 国民の45%がファシストだと本当に信じるのは、狂人か左派だけだ。また、「伝統的な」アメリカの価値観を持つのは人種差別主義者かファシストか、あるいは政治的主流の立場にいない者だと考えるのも、狂人か左派だけ。前回の大統領選でヒラリー・クリントンに反対したアメリカの有権者は、クリントンが女性だったから反対したのであり、実際の腐敗を伴う数々の事件(ベンガジのスキャンダルと隠蔽、電子メールサーバーのスキャンダル、ウラニウムワンのスキャンダル、クリントン財団のスキャンダル、ホワイトハウス・トラベルオフィスのスキャンダル、ホワイトウォータースキャンダル)のためではないと結論を下すのも、狂人か左派だけである。

 誰もがこの記者のように考えないということを、いつか記者本人が気づく日が来ることを願う。ただ、ひとつだけ言っておこう。アメリカ人がアメリカの伝統的価値観を信じ、不法移民によって若い女性が殺害されたことをより危惧するからといって、それによって彼らがファシストになるわけではない。

【Blue:リベラル派】:反対意見を持たない限りは「自由の国」

The Land of the Free — Unless You Disagree

 アメリカにおける政治的な権利のダブル・スタンダードには、保守的な思考をする人でさえ驚かされる。トランプに対する左派からのいかなる批判も、無礼だと却下されるし、保守派がオバマ大統領と彼の家族を任期中ずっと嘲笑し、侮辱し、辱めたことを気にすることもない。

 我々はかつての独裁者や旧共産主義体制から聞いたことによく似た、危険な音を聞いている。トランプ大統領はメディアが彼を批判すると、本気で「メディアは国民の敵だ」と発言する。トランプ大統領は「大統領批判の報道を禁じている国」を擁護しているのだろうか。メディアを抑制することは、一般人の発言を抑制するのに似た危険への第一歩だ。

 もっと危惧されることは、政府内の共和党員の誰ひとりとして、報道の自由を擁護する発言をしないことだ。「報道」に対するトランプの攻撃は、現実の世界に具体的な影響を与えている。たとえば最近、トランプが名指しで非難した新聞社であるボストン・グローブ社を恐喝したとして男が逮捕された。この男の脅迫文には、同新聞社に対する「怒りに満ちたトランプのツイッター文」が、そのまま使われていた。

 こういうことが何故おきるのか? もちろんメディアの影響だ。Foxニュース社を筆頭とする保守派メディアは、政治的かつ社会的だと思わせる報道に長けており、内容は大きく偏っているにもかかわらず、視聴者は彼らが報道する内容を容易に信じている。何年もの間、Foxニュースは事実を「部分的に真実なもの」もしくは完全な虚偽として報道している。リベラルが言うことは何でも間違っていると言い、左派に対する怒りを引き起こしながら、自らを「公平かつバランスのとれたメディア」だと公言し、何百万人というアメリカ人が、「Foxだけがアメリカで唯一、偏見のないテレビニュース」だと信じているのである。

 この中での悲劇は、何百万人ものアメリカ人が「自分たちが期待する以外の視点を受け入れることを完全に拒絶している」ことだ。Foxニュース以外の大手メディアと保守的なブログ以外のメディアは、トランプと内閣には様々な理由において批判的だが、その多くは党内閣と何の関係もない。しかし、それらの報道がどれほど調査された結果でも、 それに対して大統領と彼の信者は怒り、偏っていると言って棄却するのである。トランプとFoxニュースは、「トランプだけが真実を伝える人である」として事実に代わる真実を作り出そうとしているのだ。

 「報道の自由」は229年間、米国憲法の一部である。保守派は憲法に忠実であると主張しているが、この場合の嘘は明らかだ。アメリカの創設者たちが、政府の支配から報道の自由を守ることを望んだのは、「出版の自由は最大の武器のひとつであり、独裁政権以外には決して抑制されるものではない 」からだ。アメリカの報道の自由を拘束しようとするトランプの努力と――彼の支持者の1人によってジャーナリストへの実際の脅しという危害を引き起こさせたことこそ——————「独裁」の定義に他ならない。特定の人たちのみがすべての権利を手にする国を作ろうとするのは、非常に危険である。

"The freedom of the press is one of the greatest bulwarks of liberty and can never be restrained but by despotic Governments." (報道の自由は偉大なる自由の砦であり、決して独裁政治によって抑制されるものではない)

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

関連する投稿


社会的な弱者を決めつける、矛盾だらけのリベラル派

社会的な弱者を決めつける、矛盾だらけのリベラル派

米テキサス州に暮らすイスラム教徒のジャーナリスト・西森マリーが、米国内でも報道されにくい保守派の声やテキサス州など南部の住民たちの声をお届けするコラム。今回は「社会的弱者として擁護されるべき人々」を、「白人男性以外」、「キリスト教以外」だと決めつけているように見えるリベラル派の矛盾を、保守派はどう見ているのかについて。


アラバマ州で中絶違法が決定 女性たちの権利はどうなるのか?

アラバマ州で中絶違法が決定 女性たちの権利はどうなるのか?

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は、先日アラバマ州で中絶が禁止される法案が通ったことについて。リベラル派の著者が「これは女性の権利が取り上げられたも同然」と大反論する法律とは、どんな内容なのか?


学生たちを借金から解放させた米実業家に賞賛の声

学生たちを借金から解放させた米実業家に賞賛の声

大学の学費が高額なことで知られるアメリカ。親が裕福ではない限り、大抵の学生が卒業後に返済が始まる学生ローンを受けて進学するため、借金を抱えながら社会人になる。それでは若者たちが夢に向かいにくいと、ある実業家が大学を卒業する生徒、約400人分の学生ローン、総額約44億円を肩代わりすると発表。感動と賞賛の声がアメリカを駆け巡った。


【Red vs. Blue】全米ライフル協会に迎合するトランプ、国連武器貿易条約から離脱か?

【Red vs. Blue】全米ライフル協会に迎合するトランプ、国連武器貿易条約から離脱か?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は、銃規制に反対する全米ライフル協会を支持するトランプ大統領が、同協会の会合で「国連武器貿易条約」から離脱すると発言したことについて。


米大手メディアはなぜキリスト教徒迫害の現状を伝えないのか?

米大手メディアはなぜキリスト教徒迫害の現状を伝えないのか?

米テキサス州に暮らすイスラム教徒のジャーナリスト・西森マリーが、米国内でも報道されにくい保守派の声やテキサス州など南部の住民たちの声をお届けするコラム。今回は、欧米にはびこる「ポリティカル・コレクトネスの風潮」から、イスラム教徒の迫害は欧米でニュースになるのに、キリスト教徒の迫害は報道されないという現状について。






最新の投稿


年間180ドルで、世界の一流から学べる夢の授業

年間180ドルで、世界の一流から学べる夢の授業

演技、歌、料理、映像制作など、世界で一流と言われるプロフェッショナルたちから学べるオンライン・プログラムがある。業界の第一線で活躍している夢のような講師陣が揃うだけでなく、その受講料金の安さで、アメリカで人気に火がついた。


打倒アマゾンを掲げるウォルマート 家の冷蔵庫の中まで配達?!

打倒アマゾンを掲げるウォルマート 家の冷蔵庫の中まで配達?!

国土が広大なアメリカでは、宅配に時間が掛かる。そのため企業は短時間で荷物を届けるサービスを競い、時短輸送システムの構築に力を注いでいる。現状、宅配のスピードに関してはアマゾン・ドットコム社のプライム会員サービスが王者の座についているが、それに対抗しようとするのが全米各地に大型店舗を展開する大企業ウォルマート社だ。


今週の神秘ナンバー占い(2019年6月14日~20日)

今週の神秘ナンバー占い(2019年6月14日~20日)

当たりすぎて怖い? ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスがお届けする今週の神秘ナンバー占い。神秘ナンバーとは、東洋数秘術、西洋数秘術、アステカ秘術など複数の占術をベースに導き出す、運気を読み解く数字のこと。あなたの運勢はどのように変化する?!


【Red vs. Blue】日本でのトランプ大統領の発言に、アメリカ国民はどう思ったか?

【Red vs. Blue】日本でのトランプ大統領の発言に、アメリカ国民はどう思ったか?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は先月、日本に新元号初の国賓として訪れたトランプ米大統領が、日本で開催された記者会見で自国の政敵の悪口を言い、金正恩の発言をサポートしたことについて。


再選活動本格始動! トランプ大統領とディナーを食べたい人、募集中

再選活動本格始動! トランプ大統領とディナーを食べたい人、募集中

毎度お騒がせのドナルド・トランプ大統領が、「彼とディナーを一緒に食べたい人」を募集している。来年の大統領選挙での再選に備えたPR活動の一環だ。公式HPで応募がスタートされるや否や、ネット上は大騒ぎになっている。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング