ニューロサイエンスを駆使したゲームで人材を採用する企業が続々

ニューロサイエンスを駆使したゲームで人材を採用する企業が続々

アメリカでは昨今、離職率の高さが問題になっている。人事担当者が数多くの履歴書を吟味し、面接を重ねても、それだけでは判断がつかない現実があるようだ。そんな中、候補者の適正を判断するAI搭載ゲームやビデオ面接アプリを使って、その結果で候補者の適正を判断する大手企業が増えているという。


人事担当者では見抜けない候補者のリアルな適性

 アメリカの大企業ではプロジェクトによっては1日に何十人も採用しなければならないこともある。人事担当者は、数多くの履歴書に目を通すだけでも大仕事だ。応募者も複数に渡る難関を突破できるよう周到に準備をして面接にのぞむ。しかし昨今、アメリカでは社員の離職率に悩む企業が後を絶たない。せっかく雇ってもすぐに辞められたのでは、企業の生産性は上がらない。

 その救世主として大手企業が採用しはじめたのが、AI搭載のゲームや、AIを相手にしたビデオ面接のアプリだ。アメリカでは10年ほど前からビデオ面接を取り入れる企業が出始め、HireVue社のビデオ面接ソフトウエアが広く知られているが、現在テスラ社、ユニリーバ社、アクセンチュアー社、リンクトイン社など50以上の米企業が採用しているのが、ベンチャー企業「Pymetrics」が開発したニューロサイエンス(神経科学)ゲームだ。

 このゲームを開発した同社によると、企業が新規に人を採用しても、約31%が、「思い描いていた仕事とは違った」などの理由で、半年以内に退職してしまうのが現状だという。しかし、応募者にこのゲームをさせると、個々の性格や才能、行動力などが明確になり、離職率の低下に繋がる。面接官という「ひとりの人間によるバイアス」がかけられることなく、応募者「その人」の真の姿を評価することができるとして、導入した企業からの評価も上々だ。

ニューロサイエンス・ゲームは職種のマッチメイカー

 Pymetrics社のフリーダ・ポリーCEOは、ハーバート・ビジネススクールとマサチューセッツ工科大学(MIT)で神経科学の研究をしていたシングル・マザーで、自身も就職に悩み、周囲でも「死ぬほど勉強して、やっと入社した念願の会社が自分に合わず、すぐに退職した」というケースを多く見て来た。それを避ける方法はないものかと考えていたとき、アマゾンやネットフリックス、スポティファイなどのプラットフォームが、ユーザーの好みや動向データを把握し、その人が選んだ商品の内容を分析してユーザーに合う商品を推薦する機能にヒントを得て、企業と人材のマッチメイキングを神経科学とテクノロジーを使用して行うことを思いついたという。その後、 ロックフェラー財団の支援なども受けて、人材マッチメイキングのツール開発を行い、現在に至っている。

 このゲームを使用している企業では採用過程の初期段階でゲームを行い、そこで残った候補者が人間との面接に進むため、面接官による審査の回数が減ったという。また、Pymetrics社は多数の大手企業と契約しているため、ある募集に応募した人材がそのポジションには不適格という結果が出ても、ネットワーク内の他社が別のポジションで探している適正人材だった場合、その人を他社へ紹介するサービスも行っている。

 多くの人は、最初に希望した職業を得られるわけではない。最終的には90%近い人が、望んだ仕事とは異なる職に落ち着くと言われている中、このゲームを利用することで、自分の思わぬ才能が分かり、より相応しい職に就ける人が増えるかもしれない。企業にとっても応募者が真に適する役職や部署を見出せるため、効率のよい採用にもつながる。求職者にとっても、企業にとっても「ウィン・ウィン」のツールだといえそうだ。

https://www.pymetrics.com

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