【Red vs. Blue】トランプ大統領、ロシア疑惑調査文書の機密解除指示を撤回

【Red vs. Blue】トランプ大統領、ロシア疑惑調査文書の機密解除指示を撤回

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回はトランプ大統領が 突然、自身のロシア疑惑調査の機密を解除した背景に関して保守派、リベラル派が意見を交わす。


 トランプ大統領は先月17日、FBIが調査中である「2016年の大統領選におけるロシア干渉疑惑」の調査文書の機密を解除することを表明した。それを受けて、機密解除により、同調査に与える影響の大きさを危惧したアメリカの同盟国や司法省関係者、共和党議員などがトランプ大統領を説得。その結果、大統領は20日、「機密解除を撤回する」と発表した。ロバート・ミュラーFBI特別顧問によって進められている同調査では、大統領関係者の多くが起訴されており、大統領はかねてから「魔女狩りだ」と調査に反発している。

出典:『SF Gate』
Trump walks back his plan to declassify Russia probe documents
https://www.sfgate.com/news/article/Trump-walks-back-his-plan-to-declassify-Russia-13247389.php

【RED: 保守派】ついにトランプが掃き溜めを掃除する

Trump’s is finally ‘Draining the Swamp’

 中間選挙に向けて優位に立つトランプ大統領は、カーター・ページ(大統領選のトランプ陣営外交政策顧問)に関する令状申請を含めた複数のロシア疑惑に関する機密調査書類に関して、機密を解除するように指示した。興味深いのは、米議会中間選挙が迫ったこの時期にこれらの書類を機密解除するというタイミングだ。

 トランプ大統領が達成したいことは2つある。ひとつはオバマ時代の司法省による目を見張るような腐敗と、彼らが大統領選挙中に当時の野党を不法に監視したことを実証することだ。オバマ政権が実にお粗末な根拠でトランプ陣営を偵察した事実には驚かされたが、機密解除によって、そのことが明らかにされるだろう。

 二つ目は、民主党を「大統領選に勝つために連邦政府の権限を巧みに利用し、犠牲を払わずに勝利しようとした腐敗した政治家集団」として描き出して、中間選挙を共和党に有利にシフトさせることだ。

 トランプ大統領の調査文書機密解除とロシア疑惑文書の開示が発表されて以来、民主党の上・下院議員の態度は常に頑なだ。現在進行中の最高裁判事候補者ブレッド・カヴァナー氏の公聴会においても、彼らは共和党員と協力する姿勢を見せていない。このことは、民主党が2016年の選挙戦でドナルド・トランプを弱体化させようとしていただけでなく、選挙戦中とその後にトランプの顧問を偵察し、共和党と協調しようという素振りさえも見せなかったという構図を、中間選挙を前にして有権者に示す証明でしかない。

 今年11月、もしも上院・下院ともに勝てず、カヴァナー裁判官が最高裁判事に承認されるのを阻止できなければ、ワシントンD.C.にいる民主党員は寒さが身にしみることになるだろう。

【Blue:リベラル派】「ディープ・ステート」が誰なのかは明らかだ

The United States of Deception

 トランプはアメリカの政治を支配する強力な秘密結社「ディープ・ステート」(Deep State /陰の勢力)の話をするのが好きだ。トランプは、このグループは自分とその味方である共和党に逆らって動いていると話す。これについては、トランプは半分だけ正しい。アメリカの政治には、信じられないほどの影響力を持つ強力なグループがある。「ディープ・ステート」に対するトランプのヒステリックな反応の皮肉な点は、このパワフルなグループは秘密結社でもトランプを傷づけるわけでもなく、トランプと彼の同朋の支援に専念していることだ。

 ケーブルテレビ局のFoxは、「自分たちが唯一の信頼できる情報源であること」を何百万人もの共和党支持者に説得でき、Foxの番組内における局の見解は大統領であるトランプの判断にも直接的な影響を与えている。今回のトランプによる調査関連文書の機密解除要求もその影響の一例で、背筋が寒くなる。ワシントンD.C.の新聞『The Hill』紙に向けてトランプは、「自分では実際に文書を読んではいないが、FBIの調査が政治的な“詐欺”として始まったと証明されることを期待している」と言った。トランプはこの考えをホワイトハウスの法律顧問から得たのではなく、Foxニュースのパーソナリティーであるルー・ドボス氏、ショーン・ハニティー氏、ジェニーン・ピロ氏から得たという。

 このFoxの背後にいるのは誰か? 彼らは誰の利益を代表しているのか? 

 Foxニュースを牛耳っているのは、かつてトランプを「大バカ」と呼んだオーストラリアのビジネスマン、ルパート・マードックと、株主の価値が人生の指針となると信じているらしい多くの裕福なアメリカ人たちだ。彼らは、保険医療は国民の基本的な権利ではなく、労働者が国の補助を受けなければ食料も買えないほど低賃金で働くことも、こういう労働者が長年かかって積み上げた退職給付を奪うことも不公平ではないと考えており、「トランプと彼の閣僚は“正義の味方”だが、それ以外の政府は自由と利益の敵だ」と、アメリカ人に信じさせたいのだ。たとえトランプと彼の取り巻きが嘘をついて、自分の利益に叶うようにアメリカの法律を変えたとしても、Foxニュースはそれを問題にしないのだ。

 しかし、すべてのアメリカ人がFoxニュースの望むガイドラインに沿っているわけではなく、Foxが我々に信じさせようとしている「悪者」は、政府内の人間ではない。民主党は、トランプが望んだ文書を公開すれば情報源を危険にさらし、情報提供者の安全を脅かす可能性があると警告した。従って調査書類の公開を要求した数日後にトランプが、二つの「非常に良き同盟国」からのアドバイスを得て、「情報公開は良い考えではない」と前言を撤回したことに対して、実のところ誰も驚きはしなかった。

 世論調査によると、来月の中間選挙では民主党が12ポイントのリードを獲得している。NBCニュースの世論調査ではアメリカ人の60%近くが、今のトランプの国家運営の方向性が変わることを望んでいる。共和党は、現在進行中のロシア調査、移民児童収監に対する人々の怒り、トランプが引き起こした中国との貿易戦争、トランプの最高裁判事候補スキャンダルなどの問題から、いかにして脱却するか必死になっている。だからFoxが、機密文書の公開というドラマチックで飛んでもないアドバイスで、トランプに助け舟を出したというわけだ。

 このFoxニュースのアイデアは、単純でとても聡明だ。実際にはどの文書も公開されなかったものの、文書公開の提案をしたことは、ロシア・スキャンダルにおけるトランプの無実を示唆することになり、ひいては共和党を救うことにもなる。ルパート・マードックと彼の同朋にとってトランプは夢の到来に違いない。トランプの考えは、彼が最後に話した人に帰属するらしく、彼の決定の多くは前日のFoxニュースに影響されているようだ。本当の「ディープ・ステート」はFoxであり、彼らはまたもや彼らが使いやすいバカなアメリカ大統領を作ったのだ。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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