中間選挙の結果がトランプ再選にとって好都合なワケ

中間選挙の結果がトランプ再選にとって好都合なワケ

テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。先日の米中間選挙で、トランプ率いる共和党は下院の過半数を民主党に取り返されてしまったが、保守派たちは「この方がトランプ再選に向けて好都合だ」と思っているのだ。


トランプ支持は不動! 選挙結果はプラスに働く

 アメリカでは大統領選の2年後の中間選挙は「大統領への信任投票」と見られており、通常は政権党が下院で30~35席、上院で4~5議席を失う。

 今回の中間選挙には52億ドルという、史上最高の費用がかかった。民主党が費やした額は選挙費として公表されている額だけでも共和党の額を3億3,000万ドル以上も上回り、私が住んでいるテキサス州でも民主党は共和党の2倍以上もの選挙費をかけていた。こうした状況下にあっても、共和党が下院で27議席しか失わず、上院では3議席も増やしたことは、トランプ政権にとってポジティブな結果と言って過言ではない。オバマ前大統領は2010年の中間選挙で下院63議席、上院6議席も失っている。

 「ねじれ議会」は、トランプが推す政策が通らないという点ではネガティブな結果と言えるかもしれない。しかし、今回追い出された共和党議員のほとんどは民主党が強い選挙区出身の中道派で、そもそもトランプの保守的な政策に反対票を投じていたので、トランプにとっては「プラス・マイナス・ゼロ」だ。

 しかも、もし中道派の共和党議員が再選され、共和党が下院で過半数を保っている状態でトランプの政策が通らなかったとしたら、トランプの支持者たちは「上下両院で共和党が過半数なのに、なぜ未だにメキシコ国境に壁が建てられないんだ!」と、不満を感じるだろう。支持者たちの苛立ちや不満は投票の原動力にならない。

 その代わりに、今回の結果から生まれた「ねじれ議会」は、2020年の再選選挙の際にトランプに最高の言い訳を与えてくれることになる。トランプは「下院で過半数を持つ民主党が、私の政策を妨害している!」と、民主党に対する怒りを煽り、自分の支持者を投票所へと駆り立てることができるからだ。以前も当コラムで書いたが、「怒り」は有権者を投票所に向かわせるための最高の機動力である。

「今回の結果」を出したトランプは大統領再選の可能性が高い

 僅差ながらも上院での共和党の勝利もばかにならない。アンチ・トランプの共和党議員2人が引退し、その代わりにトランプ支持派の候補が当選した。また、通称カヴァナー・スキャンダル(民主党が証拠のないレイプ疑惑に焦点を当てて、トランプが任命した同判事の最高裁就任を阻止しようとした)の際に、激しくカヴァナー判事を批判した民主党議員4人が落選し、トランプを全面的に支持する共和党候補が当選した。

 それ故、たとえ人工妊娠中絶などに関して民主党に近い思想を持つコリンズ議員とマーカウスキー議員のような共和党女性議員が反対しても、上院は次々にトランプが任命する保守派判事を控訴裁判所に送り込むことができるのだ。トランプ支持者にとって最大の課題は「連邦裁判所で保守派判事を増やすこと」なので、これはトランプ再選には非常に有利な展開になる。

 また、各州の知事選の結果も見逃せない。両党にとって最も重要な州は、選挙の度にどちらに転ぶかが分からない激戦州のオハイオ州とフロリダ州だ。今回の中間選挙で民主党はこの2州に共和党の2倍以上の大金をつぎ込んで、オバマ夫妻やセレブたちも特にこの2州の民主党候補を積極的に応援していた。それにも関わらず両州の知事選でトランプが応援した共和党候補が勝っただけでなく、フロリダ州では現役の民主党上院議員を共和党候補が負かしたため、保守派は2020年の大統領選でトランプが再選される可能性はすごく高いと思っている。

 ちなみに、私が住むテキサス州では、第2選挙区で当選し、共和党下院議員になったハーバード大卒の元ネイヴィー・シールズ、ダニエル・クレンショーが話題になっている。米軍兵士として戦ってアフガニスタンで右目を失い、アイパッチをつけているクレンショー議員は、まるでハリウッドの海賊映画に出てくるスターのようなイケメンで、女性にも人気が高い。将来は大統領との呼び声も高い議員なので、日本のみなさんも彼の名前を覚えておいて損はないだろう。

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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