痩せたモデルの起用は今のトレンドに合わない?
今月8日、ニューヨークにて、アメリカ生まれのセクシーな下着ブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」(Victoria’s Secret通称VS )の恒例ファッション・ショーが開催された。ゴージャスな下着と、天使のような大きな羽をつけてランウェイを歩く美しいモデルたちは“エンジェル”と呼ばれ、今や女優としても有名なミランダ・カーや、世界一稼ぐモデルと言われるジゼル・ブンチェンなどもVSエンジェルの出身だ。
毎年このショーには大物ゲストが招待され、過去にはジャスティン・ビーバー、リアーナ、ブルーノ・マーズなどが舞台に上がった。その様子は後日、全米ネットでTV放映され、NFLスーパーボールに匹敵するほどそれを楽しみにしているアメリカ女子たちもいると言われている。
しかし、長年に渡ってブランド下着業界を牽引してきたVSに陰りが見えてきた。アメリカでは数年前からVSに対して「痩せたモデルばかり起用し、多様性に欠ける」というバッシングが上がっていたが、「Me, too」ムーブメントの後押しも受けてか、今回のショーの直前には「VSボイコット運動」にまで発展した。
社会の風潮に合わない自社マーケティングを押し通すと……
昨今のアメリカでは「Body Shaming」(誰かの体型をからかったり、体型にコメントすること)に繋がることや、「多様性」を重んじないマーケティングだとSNSでバッシングされる傾向が高い。特に女性の外見に関しては、「どんな体型の女性も、みんな同じ女性」という主張を尊重しないと、女性から反旗を翻されることも多い。
これまでは揺るぎない王者の座に君臨していたVSだが、昨年の売り上げはその前年より5%減少し(2016年$78億ドル、2017年$74億ドル)、視聴率の高さでも知られていた恒例のVSファッション・ショーのTV放送も、910万人が視聴した2014年以降、減少を続け、昨年は500万人にまで下がった(今年のショーの放送予定は12月)。
これとは反対に、VSの姉妹ブランドでティーンネイジャーを対象にした「Pink」の競合、アメリカン・イーグルの下着ライン「Aerie」は、「Body Shaming」のムーブメントに敏感に対応したことで若いファンを獲得している。素人らしさがある等身大のモデルたちを起用して、今年もっともティーンネイジャーに支持された下着ブランドに選ばれただけでなく、好調な売上げの増加に合わせて年内中に全米に35〜40店舗を新たにオープンする計画だ。
反感の声やボイコット運動を受けて、VSのマーケティングを指揮するエド・ラゼック氏は、「数年前にプラス・サイズのモデルを起用したが、まったく興味を持たれず、今もそれに興味のある人はいない」と反論。しかしそのコメントが炎上してしまい、インスタグラムのアカウントを閉じた経緯がある。売り上げ減少を取り返す策として焦ったのか、今年のショーのモデルには白斑症を持つ注目のモデル、ウィニー・ハーロウを起用したが、少々遅かった感は否めない。
そんな崖っぷちに立たされたVSだが、美しい“エンジェル”たちによるファッション・ショーは米国時間12月2日、ABC局でTV放映される。