「MAGA」帽子とBTSのTシャツで語る「政治ファッション協奏曲」

「MAGA」帽子とBTSのTシャツで語る「政治ファッション協奏曲」

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などを、ジョーンズ千穂がアーカンソー州より紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。今回は、全米で売られている「MAGA帽子」やメッセージTシャツについて。背景を知らずに購入すると、トンデモナイことに巻き込まれるかも知れない。


その帽子をかぶっていたことで事件に

“Make America Great Again”(再び、アメリカを素晴らしくしようじゃないか!)

 ご存知のように、これはトランプ大統領の選挙キャンペーン用語だが、アメリカではこのフレーズの頭文字をとった「MAGA」を配した様々な商品が販売されている。これらの商品はトランプ政権のコアな支持者のためだけではなく、ニューヨークやフロリダなどの世界中から旅行者が訪れる観光地の土産屋などでも普通に売られているため、誰でも簡単に購入できる。しかし、この帽子に書かれたメッセージの背景を知らないと、「知らなかったから」では済まされないようなことに巻き込まれてしまう恐れもある。

 私が住む米南部は共和党が優勢の地域で、共和党支持者たちによるトランプ大統領の評価はとても高い。彼らによると、過去の“政治屋”が荒らしたアメリカの法律を正しい方向に持って行くことができ、「NOにはNOと言える」、つまり「はっきり物を言える」大統領はトランプ以外にはいないそうだ。そういう地域なので、前述の「MAGA Hat」、通称「トランプ帽子」をかぶってトランプ支持を示す人たちも街でよく見かけられる。

 しかし、共和党優勢のどの南部の州でも、州都や都市では民主党支持者が多い。そんな中で起きたのが、テキサス州サンアントニオで、「MAGA Hat」を被っていたティーンエイジャーの男の子が、アンチ・トランプの店員にその帽子を奪われた暴行事件だ。この様子はビデオに残されていたために波紋を呼んだが、似たような事件は各地で頻繁に起きている。

メッセージを身につけることは、それを支持すること

 これまでアメリカでは、たとえばディナーの席での会話には政治と人種と宗教の話題とその歴史的背景も含めた議論はタブーとされ、知らない人にはそういう繊細な話題を振るべきではないという風潮が一般的だった。しかし、昨今のアメリカにおける政治的見解の議論は、両派とも極端に攻撃的なアクティビストたちの声が大きくなり、ちょっと異常な現象ではないかと思うほどの様相になっている。

 日本でもK-POPグループのBTSが原爆のキノコ雲がプリントされたTシャツを着ていたことが議論を呼んだが、同グループはナチス・ドイツ軍を彷彿させるような衣装を着たとして、米ユダヤ系団体からも抗議を受けた。結果、BTSの事務所がメディアを通じ、謝罪を公表したが、これがアメリカ国内で起きていたら、もっと大きな騒ぎに発展しただろう。たとえば、白人でも白人でなくとも、人気アーティストがKKK(Ku Klux Klan白人至上主義団体)のTシャツを着てアメリカのTVに出演したら、どんなことが起きるか想像できるだろうか? 「KKKが何を意味するのか知りませんでした」、「意図はありませんでした」という言い訳をしても通用しないだろう。SNSの炎上だけでは済まないはずだ。

 帽子やTシャツに書かれた英語のメッセージには、政治的・思想的なものや人を揶揄するものが多い。だからこそ、アメリカを旅行中にその背景を知らずにメッセージ・グッズを購入する際には注意してほしい。冗談のつもりで「MAGA Hat」を土産物屋で買って米国内で被っていたら、あなたも前述のティーンエイジャーのような目に遭ってしまうかもしれない。

 それでも「トランプ大統領支持をアピールをしたい!」という方は、この赤い帽子を被って楽しんで頂ければと思う。

この記事の寄稿者

 東京都出身。アメリカ人航空機パイロットの婚約者の米本土転勤に伴い、一般企業を退職。K-1 Visa にて渡米したのち結婚。現在、アメリカ南部アーカンソー州在住。移住後はパイロットを夫に持つ婦人の会や、日本語補習学校を通じての活動、現地日本人や移民•マイノリティーへの支援、生活アドバイス、ネット上でのアメリカ生活に関する相談・コンサルテーション、翻訳、通訳、観光案内など、国際線パイロットの夫のスケジュールに翻弄されながらも、さまざまなボランティア活動に力を注いでいる。

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