現在は英語だけだが、多言語化は時間の問題
AI技術を駆使したグーグル社の「Smart Compose」。受信メールの内容をAIが読み取り、自動で返信すべき内容を最初から最後まで書いてくれるもので、今年5月に発表されるや否や、アメリカでは大きな話題になった。その機能がさらに発展し、今度はジェンダーへの徹底配慮を行うことになったという。
現在のサービスは英語だけなので、まだ日本では馴染みがないかもしれない。実際にこの機能を使ってみると驚くほど便利なことが分かる。特に英語がネイティブではない人にとっては、文法的に間違っていない文書をAIがあっという間に書いてくれることは、内容の確認や微調整は必要でも、ありがたいサービスだろう。提案された文書に修正がなければ、TABキーを押していくだけ。このサービスがどんなものなのかを紹介した映像はこちら。
多様なジェンダー時代には、HeもSheの使用も不適切?
Smart Composeのジェンダーへの新しい配慮は、11月26日に発表されたばかり。今後Smart Composeでは、「彼」や「彼女」など、性別のある代名詞が削除される。同社のプロダクト・マネージャーであるランバー氏は、この削除決定を「代名詞を削除せずに対応する方法も検討したものの、それらが完璧ではないため、完全削除が相応しい」と説明している。
ことの発端は、ある企業調査科学者が「I am meeting an investor next week」(私は投資家と来週会う)と入力したときに、Smart Composeが「Do you want to meet him?」(あなたも彼に会いたいですか?)いう文書を提案したこと。文書は投資家を勝手に「男性」と判断したが、この投資家は女性かもしれないし、男性でも女性でもない第三の性で呼ばれたい人物かもしれない。そのため、男性代名詞をデフォルトで提案するのは不適切であり、同社としては提供するサービス内で避けるべき性差別だという判断に至ったのだという。
今後は、たとえばトム、ジョージ、マイケルなど「男性」と思われる名前の人に対してでも、Smart Composeでは「I love him」というような自動提案の表現は選ばれなくなる。どんな返事が提案されるかは、その時々のケースにより何とも言えないが、恐らく「I love it」という形や、性別をニュートラルに表現する単語として認知されつつある代名詞の「ze」などが提案される可能性が高くのではないかと推測される。
こうした細かな配慮こそが大切という価値観が浸透するのが、現代のアメリカだ。最近話題になった#MeToo運動も記憶に新しいと思うが、グーグル社のようなグローバル企業であるならなおさら、率先して男女平等、そして多様なジェンダーへの配慮ある事業決定は必要ということなのだろう。