アメリカで再注目されている「サードプレイス」の重要性

アメリカで再注目されている「サードプレイス」の重要性

日常生活の中で定期的に通えて、第三者と会話を交わせる場所「サードプレイス」が、個人や地域の活力を生み出す上で重要であると社会学者のレイ・オールデンバーグ氏が提唱したのは、今から約20年前のことだ。ネット社会が確立した今、アメリカでは再び、自宅でも職場でもない第三の場所、「サードプレイス」の重要性が注目されている。


消えていったサードプレイス

 日本でも昨今、「サードプレイス」という言葉が聞かれるようになった。前述のオールデンバーグ氏はその著、『The Great Good Place』(1989年刊)内で、地位や身分、年齢にかかわらず誰でも受け入れる「平等化の機能」としての場こそが、人の心の拠り所になると述べ、サードプレイスが都市の魅力を高めるのに必要な概念であり、哲学であると説いている。

 人は人と交流しながら人生を歩くものだ。しかし、そうした交流の場は、第二次世界大戦後に減少した。理由のひとつは、人々が公共の場での第三者との交流よりも、個人の生活に重点を置くようになったためだ。

 例えばシアトルには以前、「The Last Exit on Brooklyn」というカフェがあった。そこでは見知らぬ客同士が、日々新しい知識を語り合うのが常だった。まさにサードプレイスと呼べるような場所だったが、残念ながら閉店した。このカフェがなくなった時、居場所を失ってしまったように感じた人は少なくなかっただろう。

人に必要なのは人と語り合える「場」

 サードプレイスの減少は、ネット時代に入るとさらに加速。一人で完結できることがさらに増えたためだ。しかし現在、減ったはずの「サードプレイス」の必要性が注目されている。理由はやはりネットだ。

 例えば同じスペースに個人が集まって働く「シェアオフィス」や、若い世代のソーシャルメディア離れ。どちらもオンライン上だけでの人との繋がりに疲れ、実存するコミュニティーを求める傾向が高まった動きだろう。

 企業もこうした社会の変化には敏感だ。例えばスターバックス社では、経営の軸に「サードプレイス」を導入。単にコーヒーを飲むための場所ではなく、スターバックスという空間を体験してもらうことに重点を置いている。日本でも2016年から同コンセプトの強化をしている。

 人は一人では生きていけない。「サードプレイス」のような場で、「誰か」と何かを語り合える場所を持つことは、一人で何でもできる時代だからこそ、必要なのかもしれない。

この記事の寄稿者

東京都出身。インターナショナル・スクール、日本での普通教育を経て、1992年に渡米。シアトルで写真や美術史などを学んだのち、ニューヨーク州ロングアイランド大学で社会科学を専攻。在学中にはジプシー女性の社会的立場、低所得層のインド女性の人権などに関する研究に力を入れた。大学卒業後は日系新聞社、大手IT企業などで専任翻訳、ビジネス・コーディネーターを務め、その後、独立。現在はシアトルで翻訳家として活動を続けている。得意分野はテクノロジー関連の翻訳。趣味は写真、読書など幅広く、音楽はクラッシックや80年代までのパンク、ヒップホップやトリップホップ、初期のレスター・ヤングなどを好む。

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