年の瀬に「真の多様性」を考える

年の瀬に「真の多様性」を考える

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。中間選挙の影響もあり、リベラルと保守の対立を感じるニュースが目立った今年。しかし年の瀬は真のアメリカの良さを感じることも。


アメリカはやはり「多様性」を受け入れる社会

 12月の日本は忘年会などで忙しい時期だろうが、アメリカでも年の瀬は宗教色のあるイベントや、職場や学校でのパーティーなど、コミュニティが一堂に会す機会が増える。様々な人が集まる場所に参加するたびに思うことは、政党の対立や分断という問題はあるものの、アメリカはやはり移民の国であり、多様性を認める社会だということだ。

 今月初め、某養子縁組施設の寄付金を集めるパーティーに友達夫婦が誘ってくれた。そのご夫婦のご主人の方は元陸軍の兵士で、両足が義足だ。しかし彼はとてもアクティブかつ、誰よりもスポーツ好きなので、彼が義足であることをいつもつい忘れてしまう。そんな彼には自分の本当の子供の他に、養子が一人いる。養子は、彼の友人の息子だ。父子家庭で育ったその子供は中東で父を失った。私の友人はその後、その子供を養子に迎えたのだ。

人はみな、違ってよい

 ともすると、彼らの境遇の「悲劇的」な部分にばかり目が行ってしまう。友人は両足がないし、養子の息子は本当の父親が戦死している。しかし彼らはその境遇を「悲劇」という言葉で片づけず、周囲も憐みの目で彼らを見ることはない。

 例えば義足であることについても、彼は「ちょっと運が悪かっただけ」と言う。恐らく人には言えないような苦しみも経験しているはずだが、今ではあちこちの学校に出かけては、子供たちに自分の経験を話している。「どんな経験も社会の役に立てば、経験したこと自体に価値が生まれる」というのが彼の考えだ。

 12歳になった養子の息子の方は、本当のお父さんが死んでしまったことは悲しいが、二人もお父さんがいる自分はラッキーな人間だと言っていた。そして「二人目のお父さんは誰よりもカッコいい、僕のヒーロー」と言って、パーティーでも彼に抱きついていた。

 ふと見渡すと、そのパーティーには様々な人が溢れかえっていた。私を含むアメリカに移民してきた人々。紛争地域から難民としてやってきた人、同性愛で養子をもらったカップルたち。そこにはリベラル派、保守派関係なく、誰もがなごやかに歓談を楽しんでいた。考え方も、境遇も生きてきた人生も異なるけれど、誰もがみな同じ人間としてその場を楽しめる、何かの目的に向かって協力しあえる――。これが本来はアメリカの良さなのだ。誰もがみな同じ人間。そして同時に人はみな、違ってよいのだ。

この記事の寄稿者

青山学院大学卒業。コマーシャルなどの映像コーディネーターを経て1998 年、宝塚歌劇団香港公演の制作に参加。その後プロデューサーに転身。株式会社MJ コンテスほか複数企業の代表として、ネバダ州立大学公認のピラティススタジオ日本進出事業や各種研修事業、2007 年に行われた松任谷由実の 「ユーミン・スペクタクル シャングリラⅢ」をはじめとする国内外の舞台・イベント制作など、さまざまな事業を展開。これまでにベストセラー数冊を含む70以上の書籍、DVD 作品を企画、プロデュース。現在も様々な事業を展開しながら“Go Tiny”(大切なものが、すべて半径5メートル以内にあることに気づこう!の意)というライフスタイルの提案も展開中。

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