2019年、「狂気vs正気」アメリカはどこへ?

2019年、「狂気vs正気」アメリカはどこへ?

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。2019年は米大統領選挙の前年。次期大統領候補者についての話題が増えるのは必須だ。ますます国の分断が進みそうな予感だが……?


アンジョリーナ・ジョリーが大統領に立候補?

 年末、女優のアンジョリーナ・ジョリーが2020年の大統領選に名乗りを上げるのではないか、というニュースが全米を駆け抜けた。ことの発端は英BBCラジオのインタビュー。これまでも国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)親善大使として人道問題に取り組んできた彼女は、少なからず政治的な発言をすることがあった。今回同局のインタビューで大統領選への興味を聞かれると「必要あれば、そこに行く準備はある」と、出馬を否定しなかったのだ。

 彼女に限らず、今年はトランプ大統領の二勝目を阻むために、多くのリベラルたちが声を上げていくだろう。そうした人たちが実際に選挙に出馬するか否かは別問題だが、著名人が騒げば騒ぐほど、世間がそれを騒ぎ立てるのは必須だ。こうした流れは、間違いなく国の分断を引き続き助長させていくだろう。しかし、リベラル対保守の泥掛合戦に嫌気がさしている人も多く、今年は「思想差異を超えて国をひとつにしようという動きも出てくるのでは?」と少し期待している。

ジョージ・ピーターソンを支持する人たち

 カナダ人の心理学者に、ジョージ・ピーターソンという教授がいるのをご存じだろうか? トロント大学に籍を置く彼は、「北米で最も重要な思想家」という異名を持つ。アメリカ人ではないが、米国の分断が問われるようになってからというもの、彼のYouTubeチャンネルにはアメリカ人のフォロワーが急増しているという。特に、政治的に中道な立場を取ろうとする人たちからの信頼が厚いそうだ。

 彼の発言は一見すると保守寄りにも取れるが、よくよく聞くと、必ずしも保守を意味なく支持しているわけではないことが分かる。例えばアメリカでは2月に、父親と娘たちがダンスを楽しむ微笑ましいイベントが各地で開催されている。ところが昨年ニューヨーク市で、このイベントをボイコットする動きが活発になった。それは「父親と娘」に限定されるこのイベントが、性や家族の多様性を認めていないからという理由だった。ピーターソン教授は、「すべてを差別という枠組みに閉じ込めるこうした動きは、本来のダイバーシティの意味から外れた見解を世間に押し付けている」とし、このボイコットを推進したラジカルで極端な左派の動きの中にある、真のリベラリズムへの「矛盾」を堂々と説いたのだ。

狂気から、正気へ

 こうした発言自体、アメリカで公言する人は少ない。それは、「そんなことを口にすれば、誰に何を言われるか分からない」という風潮があるからだろう。そして、そうした風潮を作っている人たちは、ダイバーシティや人類平等を目指す動きを、いつでもリベラルの専売特許のように扱ってしまう――時に狂気にみちた正論をまくしたてて。

 真にリベラルを愛する人は大勢いるが、そうした人のどのくらいが、今の極端なリベラルを心の底から支持できるのだろう? 真のリベラルとは、フェアネスとあらゆる差異への寛容性を支持するものではなかっただろうか?

 アメリカはあらゆる意味で正気に戻らねばならない気がする。そして、その正気さを取り戻そうとする多くの人たちが、今、小さな声を上げようとしている。私がピーターソン教授の存在を知ったのは、あるリベラル主義者の集いだった。彼らは口々に教授の話をし、彼の発言を支持していると語っていた。保守との分断を必要以上に広げているのは、極端な左派たち――驚いたことに、そう語る人も大勢いた。そして「自分たちが真のリベラリズムを取り戻すためには、今、何が必要なのか」を、語り合っていた。

 その場を共にしたのはわずか20人足らずだが、こうした人たちがひょっとしたら、国の分断を食い止めるきっかけを作ってくれるのではないかと願ってしまう。2019年1月、次期大統領選へのカウントダウンがもうすぐ始まる。そして、それに比例するように、きっとこの国は混乱するだろう。しかし、きっとリベラル、保守に限らず、その混乱に飲み込まれず、冷静に世の中を見ることができる人は大勢いるはずなのだ。

ジョージ・ピーターソンYouTubeページ
https://www.youtube.com/user/JordanPetersonVideos

この記事の寄稿者

青山学院大学卒業。コマーシャルなどの映像コーディネーターを経て1998 年、宝塚歌劇団香港公演の制作に参加。その後プロデューサーに転身。株式会社MJ コンテスほか複数企業の代表として、ネバダ州立大学公認のピラティススタジオ日本進出事業や各種研修事業、2007 年に行われた松任谷由実の 「ユーミン・スペクタクル シャングリラⅢ」をはじめとする国内外の舞台・イベント制作など、さまざまな事業を展開。これまでにベストセラー数冊を含む70以上の書籍、DVD 作品を企画、プロデュース。現在も様々な事業を展開しながら“Go Tiny”(大切なものが、すべて半径5メートル以内にあることに気づこう!の意)というライフスタイルの提案も展開中。

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