あれから1年、#MeToo はどうなった?

あれから1年、#MeToo はどうなった?

アメリカ生活20年強。翻訳家の高柳準が、アメリカ文化とそれにまつわる矛盾を語る「アメリカで暮らしながら想うこと」。今回はハリウッド界に端を発する「#MeToo」について。女性差別問題は根深く、複雑化しやすい。性別や文化により、セクハラと性犯罪の違いに対する意識の違いを浮き彫りにしたこの運動、あれからどうなったのだろう?


SNSのハッシュタグで一気に拡散した「#MeToo」運動

 米ハリウッド界のセクハラ疑惑に始まった「#MeToo」運動。セクハラや性的被害の告発を支援するこの運動はSNSを中心に広まり世界で大きく報道された。1年が過ぎメディアでの騒ぎは下火になった感もあるが、一般社会では今も波紋を呼んでいる。

 日本でも女性の議員ジャーナリストが「#MeToo」を機にセクハラ告発を行ったことは記憶に新しい。しかし日本のそれは、米国内ほどの女性たちの告発に寄り添うような支援は見られず、文化基盤やフェミニズムの理解度により、その影響には差があることも明るみに出た例と言えるだろう。

 それでは日本以外の国ではどうだったのか。次々と被害が公表され「#MeToo」の支援者が急増した当初、セクハラには程度の違いがあると発言した米俳優や「表現の自由」の弾圧を懸念したフランスの大物女優はセクハラ擁護者として多くの女性達から敵視される事態に発展した。つまり多くの女性たちは告発を支持したということ。事実、こうした事態こそが、この運動をさらに過熱させたのだ。

 被害者が沈黙を破るよう世間に訴えた「#MeToo」は、人々にこの問題を明確に理解する必要を世界に示したと思う。今では政界や様々な業界でセクハラ対策や女性の立場を支援する傾向が強まっているが、それはこの活動のひとつの成果とも言えるかもしれない。

一般社会における「#MeToo」の影響

 ところが先日、米大手金融メディアのBloomberg.comが「#MeToo」によるウォール街への影響について興味深い記事を掲載した。

 男性社会のイメージが強いウォール街に、新たなルールが出現したという。セクハラや性的暴力を告発する「#MeToo」の時代に、男性たちが自分のキャリアを守るため「女性を避けること」が暗黙のルールになっているという記事だ。男女共に過敏になりすぎ、男女平等どころか、それが同業界の女性の活躍を阻む原因になっているとすれば、それは本末転倒だ。業界や性別に関係なく世間には「ご都合主義」がいることを考えれば、そんな自己防衛策が発生しても不思議はない。しかし、この事実は「#MeToo」支持者にとっては残念な結果だろう。

 この先「#MeToo」は、フェミニズムの最終目標である男女平等を促進する動きになるのか、もしくは男女差別に加担するものになってしまうのだろうか? 1月には「ウィメンズマーチ」も開催される。「#MeToo」が一般社会にもたらす影響は、今後さらに明らかになっていきそうだ。

この記事の寄稿者

東京都出身。インターナショナル・スクール、日本での普通教育を経て、1992年に渡米。シアトルで写真や美術史などを学んだのち、ニューヨーク州ロングアイランド大学で社会科学を専攻。在学中にはジプシー女性の社会的立場、低所得層のインド女性の人権などに関する研究に力を入れた。大学卒業後は日系新聞社、大手IT企業などで専任翻訳、ビジネス・コーディネーターを務め、その後、独立。現在はシアトルで翻訳家として活動を続けている。得意分野はテクノロジー関連の翻訳。趣味は写真、読書など幅広く、音楽はクラッシックや80年代までのパンク、ヒップホップやトリップホップ、初期のレスター・ヤングなどを好む。

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