【Red vs. Blue】大統領悲願の国境の壁、国境沿いの住人の生活はどうなるのか?

【Red vs. Blue】大統領悲願の国境の壁、国境沿いの住人の生活はどうなるのか?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は、トランプ大統領による国境壁建設案が、国境周辺で生活するアメリカ人の権利を侵害する問題について。


 全長3,000キロ以上もあるアメリカとメキシコとの国境。そこに壁を建設するための追加資金57億ドルを巡って、トランプ大統領と野党民主党との対立が続き、史上最長の連邦政府機関一部閉鎖をはじめ、多方面に影響が及んでいる。一方で、昨年3月に議会で承認された壁建設資金16億ドルをもとに、不法移民の侵入が最も多いというテキサス州のリオ・グランデ川岸を含む国境40キロ周辺の土地では、現在、建設調査が進行中だ。該当する土地には、1865年に建てられたカソリック礼拝堂や、複数の環境保護団体、何世代にもわたって住み続けている家族などがおり、なかには政府の買取提案を拒否して法廷で戦う準備をしている人たちもいる。国境に壁を作る大統領の公約について、アメリカ人の保守派とリベラル派はどう考えているのだろうか。

出典:PBS
Texas landowners prepare for border wall fight

【RED:保守派】 壁を作りたいと言うトランプは本気だ

Yes, Trump said he wanted to build a wall (of sorts) and he meant it

 トランプ大統領の存在は、良くも悪くも注目しか集まらない。政府が主導するインフラ・プロジェクトの報道は異例なことではないのに、大統領がトランプで、建設されるのが国境の壁というだけで、大騒ぎになるのだから不思議だ。

 スケールの大きなものを作るときはいつも何らかの影響を受ける市民が出てくるため、そういう市民たちは法に従って適切に保障される。これはオバマ大統領下と変わらない。

 オバマ大統領は1906年の古物保存法(注:「大統領は自然保護のために国有地を国の天然記念物に指定する権利を有する」という1906年に制定された法)を乱用して、国にとって重要な地域を保護するという極めて疑わしい目的で、個人や各州が保有する5億5,400エーカーもの土地を国の天然記念物に指定した。

 トランプの国境の壁建設にさらに似ているのが、現在カリフォルニア州知事によって先導されている極めて高額な高速新幹線プロジェクトだ。計画された800マイルの鉄道の最初の部分は肥沃な農地(マデラとフレズノの間)を横切り、農家や牧場主が保有している3,000エーカーもの土地に影響を与えることになる。アメリカ南部の国境周辺に住む市民がトランプの壁に影響を受けるのと同様に、カリフォルニアの中央渓谷に住む市民たちも、知事の提案した鉄道の影響を受けることになる。ただひとつの違いは、トランプは共和党で、カリフォルニア州知事は民主党であることだ。

 私が各米メディアに問いたいのは、「国境の安全確保は重要か?」、「不法移民問題は重要か?」だ。メディアはトランプ大統領に執着することをやめて、国家と国民が直面している深刻な問題に焦点を当てるべきではないか?

【BLUE:リベラル派】テキサスからトランプへ「うちの裏庭に壁を建てるのはやめてくれ」

Texas to Trump: Not in My Backyard

 トランプは2015年から、アメリカ南部の国境線に壁を作ると言い続けているが、その費用負担の議論が議会で決着せず、トランプは政府の一部を閉鎖している。そのため、80万人の政府職員は一時解雇されるか、無給で働くことを余儀なくされている現状だ。空港の治安や貧困層のための食料プログラム、安全検査、国立公園などが政府閉鎖の影響を受け、国はまさに混乱状態だ。

 しかし、この騒動の中でほとんど見過ごされているのは、国境沿いに住み、そこで働いている人たちの実態だ。毎日、何千人というアメリカ人とメキシコ人が商売をし、親戚を訪問し、買い物をし、観光に行くために国境を越えている。意外かもしれないが、テキサス人の多くが大統領選でトランプに投票したものの、壁建設には61%のテキサス人が反対している。季節的に発生する洪水がさらに悪化する懸念や、巨大な壁が自然の景観に与えるダメージもあり、同時に野生生物への影響も懸念されている。

 アメリカとメキシコの国境沿いの何百マイルもが牧場と農地であり、その地主の多くは自分の土地に壁が建つことを望んでいない。「必要性も効果もない」と専門家がいう壁のために、彼らの財産である土地の売却を政府から強制されるべきではない。国境警備の専門家は、多くの場所においてドローンやマンパワーを用いた監視の方が物理的な障壁よりも重要だと言っている。

 トランプは、「何千というテロリストや麻薬密輸業者が、アメリカとメキシコの国境を越えてなだれ込んでいる」と主張している。しかし実際には、南からアメリカに密輸された薬物の大部分は、大都市のメジャーな空港や入国拠点を通過して入って来ている。また、これまでにメキシコの国境で見つかったテロリストは、テロリスト警戒リストに載っていた6人だけだ。

 アメリカの本当の危険は、南の国境にあるのではない。本当の危険は、有害無益なプロジェクトのために嬉々として市民に負担をかけ危険にさらす、ホワイトハウスの狂った子供だ。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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