テキサス人はなぜ「国境の壁」建設を歓迎するのか?

テキサス人はなぜ「国境の壁」建設を歓迎するのか?

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回はメキシコとの国境隣接州に住むテキサスの人々の多くが、トランプ大統領の壁建設を支持する理由を紹介しよう。


国境の壁があるから群衆を止めることができた

 アメリカでは、「メキシコとの国境に壁を建てても無駄。不法移民は、はしごとトンネルを使って侵入してくる」と、リベラル派たちが真顔で主張している。9割方がリベラルである大手メディアも、「ローマ帝国が建造した壁も、中世の城壁も、万里の長城も敵の侵略を食い止められなかったのだから、壁は無意味だ」と言う歴史家の発言を繰り返し報道している。

 テキサス人は、このような”意見”を耳にするたびに、リベラル派のIQを疑う。なぜなら、テキサス人は不法移民抑止策としての壁の効力を身をもって体験しているからだ。

 まず最近の例では、去年の暮れにアメリカ国境にたどり着いた中南米からの移民群衆だ。7,000人を超えるこの群衆がアメリカに流入するのを食い止めることができたのは、ひとえにトランプが派遣した軍隊が設置した蛇腹型鉄条網のおかげである。この鉄条網という”壁”があったからこそ、移民の群衆はティファナの通関所に行かざるを得なかった。

 また、テキサス最西端の街、エル・パソの壁も不法移民抑止力の証拠として、国境警備隊や移民税関捜査局員たちから絶賛されている。エル・パソで逮捕された不法移民の数は壁の建造以前は12万人以上だったが、建造後は約9,600人に減少した。歴史家の発言は確かに史実に基づくものだ。しかし、モンゴルの騎馬隊やハンニバルの象の軍団、攻城兵器や大砲でフランスの港町の壁を突破したヘンリー5世の英国軍と、アメリカへの不法移民を同列にした意見は、壁の抑止力を否定する正当な論拠ではない。

アメリカで子供を産みたい妊婦も高い壁は越えたくない

 アメリカへの不法入国を企てる人々の中には、特出した運動神経を持ち、探検家のような精神力に恵まれ、高い壁も楽々と乗り越え、暗く長いトンネルも平然とくぐり抜ける人もいるかもしれない。しかしアメリカ、特に不法移民の数が多いテキサスの財政に最大の悪影響を及ぼす子連れの女性や、子供にアメリカ国籍を与えるために不法入国する臨月の妊婦が、高いはしごやトンネルを避けたがるのは誰の目にも明らかだ。

 アメリカで生まれる新生児の約8~9%(約34万人)が不法移民の子供であり、『ダラス・モーニング・ニュース』紙は、ダラス郡パークランド病院で生まれる赤ん坊の7割が不法移民の子供だと伝えている。加入が義務づけられているオバマ・ケアーの非加入者(つまり不法移民)は同病院の医療費を踏み倒し、ツケを払うのはダラス郡在住の納税者で、一昨年は2,740万ドルにものぼる「不法移民の医療費」の肩代わりを強いられた。

 また、左派系の『ハフィントン・ポスト』でも、「アメリカで出産した不法移民の食費(政府による食品配給券と給食費)として毎年20億ドル、義務教育費として1,000億ドルを納税者が負担している」と報道している。これらの子供たちは成人した後に父母、祖父母、叔父母らの家族を正式にアメリカに呼び寄せる権利を取得し、1人の赤ん坊の一族郎党が連鎖移民としてアメリカの福祉政策や生活保護の恩恵を受けられることになる。

 不法移民のために使われる費用は、リベラル派のエリートたちにとっては大した金額ではないかもしれないが、裕福とは言えないブルーカラーの人々(ほとんどがトランプ支持者)は、「そんなカネがあったら退役軍人への援助やアメリカ人の貧困層を助けるために使うべきだ」と思っている。そのため、テキサス州の納税者たちが、「少なくとも臨月の妊婦、赤ん坊や幼児を連れて堂々と歩いて国境を越えてくる不法入国者を阻止するためには壁が必要」と思うのは当然だろう。

 ちなみに、不法移民の受け入れを叫ぶ大富豪のジョージ・ソロスや、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグの豪邸は壁で囲まれ、オバマ夫妻の邸宅は複数の障害壁で防御されており、「壁は不道徳だ」と主張している民主党政治家たちは、オバマ政権時代は壁建造に賛成していた。さらに、日夜メキシコとの国境で不法移民を取り締まる国境警備員も、オバマ政権時代の国境警備局長だったマーク・モーガン氏も、皆口をそろえて「壁は絶対に必要だ」と断言している。

 こうした事実は米大手メディアでは報道されていないが、テキサス州の地元ニュースではよくとりあげられているため、壁に反対するリベラル派の不条理さにテキサス人はあきれかえっているのである。

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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