【Red vs. Blue】右派には悪夢 左派が熱狂するアレクサンドリア・オカシオ=コルテス

【Red vs. Blue】右派には悪夢 左派が熱狂するアレクサンドリア・オカシオ=コルテス

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は下院リベラル派の新人女性議員、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏が全米の注目を浴びていることについて。


 昨年11月の米中間選挙では民主党が下院で圧勝し、野党から与党に返り咲いた。さらに下院では、女性議員数が過去最多の102人(そのうち89人が民主党)となった。中でも最も注目を浴びているのが、女性として最年少で議員となったニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏(29)だ。民主社会主義者として立候補し、公約には「富裕層の所得税率を最高70%に引き上げる」、「国民皆保険の実現および無料化」、「大学の無料化」などを掲げ、リベラル派からは大きな賛同を、保守派からは批判を浴びている。米メディアで引っ張りだこのオカシオ=コルテス氏の登場を、アメリカのリベラル派と保守派の一般人はどう見ているのだろうか?

RED: オカシオ=コルテスは、悪夢ではなく単に不愉快なだけ

Alexandria Ocasio-Cortez is not a nightmare she is simply obnoxious

 リベラル派たちは、こぞってオカシオ=コルテスを絶賛している。今やキング牧師の再来、あるいはケネディ元大統領の再来だなどと感嘆の声をあげている有様だ。かくいう私も、思わず感嘆の声を上げてしまいそうだ。なぜなら、彼女が放つ言葉があまりに規格外だからだ――そう、悪い意味で。

 よくぞ、ここまで無知をさらけ出せるものだと感心してしまう。バカさ加減はアッパレと言ってよい。彼女は一見すると時代の旗手のように見えるかもしれないが、民衆はその無知に引っ張られてはならないのだ。リベラル派たちは、社会主義の行く末を学び直すべきだろう。オカシオ=コルテスを支持する人は恐らく、旧ソ連との間にあったかつての冷戦や、社会主義政権下で起こっているベネズエラの経済危機などに関心がない。確かに「富裕層への税率を最高70%まで引き上げよう」とか、「メディケアと大学を無料にしよう」という、常識を逸脱した大胆な物言いやアイデアは世間の目を引くが、それを本気で実現してほしいと言う人は、小学校から学び直した方がよいだろう。そして、社会主義者だと自称するオカシオ=コルテスも、かつて衰退した社会主義国家の政策を並べて自分の発言と照らし合わせて検証すべきだろう。社会主義の末は破滅であることを、歴史は知っている。

 保守派は、オカシオ=コルテスを脅威とは思っていない。だから、彼女の躍進は悪夢にはなりえない。ただ、彼女の教養に欠ける発言が不愉快であることは間違いない。

Blue: アレクサンドリア・オカシオ=コルテスは未来の代弁者

Alexandria Ocasio-Cortez Is the Voice of the Future

 歴史は、革新的アイデアを中傷されながらも、最終的には米社会へ貢献したことが記憶されている進歩主義の人々の話で溢れている。非白人のアメリカ市民の権利が体系化されて、まだ50年も経たないが、今ではマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の誕生日はアメリカの祝日になっている。100年前、女性は投票することを許されなかったが、今は選挙候補者の政治生命は、その能力が女性やマイノリティーの有権者にアピールするかどうかにかかっている。それにもかかわらず、男女平等憲法修正条項案による女性の権利は未だに国内法令に含まれていない。

 アメリカは建国以降、わずか10年前まで、政府のトップレベルは白人男性で占められてきた。米最大手企業のトップも同様だ。バラク・オバマがアメリカの人種と権力の関係式をひっくり返した時、国民の半分はそれを祝い、半分は激怒した。オバマは中道派だったものの、多くの白人アメリカ人には黒人が国のリーダーであることを受け入れるのは困難であることが証明された。ドナルド・トランプが米国民に対し、ハワイ生まれのオバマ氏が本当にアメリカ人と言えるか疑問を呈するように促したことは記憶に新しい。

 民主社会主義者として出馬し、議員の座を獲得した大人気のヒスパニック系女性、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス。これまで、パワーを握った共和党は減税して連邦政府の財政赤字を増幅させてきたが(オバマ大統領が任期を終えて以降、約2兆ドルになる)、オカシオ=コルテスは富裕層に対する増税を主張している。所得の70%は高すぎるように思えるかもしれないが、この率はアメリカン・ドリームが健在だった1960年代の最高率91%よりもずっと低い。その後、右派が最高税率を引き下げたため、それに伴って中産階級が縮小してきたのだ。

 オカシオ=コルテスの考えは、途方もないものではなく歴史的な先例に基づいたものだ。つまりそれは、皮肉にも共和党が好きな「古き良き時代」を反映するものでもある。共和党員の彼女の登場に対する反応――感情的な大量の個人攻撃広告――は、彼女の主張の正しさを証明したにすぎない。共和党の攻撃は、彼女が女性だからなのか、それとも彼女が正しくて怖いからだろうか。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

関連する投稿


社会的な弱者を決めつける、矛盾だらけのリベラル派

社会的な弱者を決めつける、矛盾だらけのリベラル派

米テキサス州に暮らすイスラム教徒のジャーナリスト・西森マリーが、米国内でも報道されにくい保守派の声やテキサス州など南部の住民たちの声をお届けするコラム。今回は「社会的弱者として擁護されるべき人々」を、「白人男性以外」、「キリスト教以外」だと決めつけているように見えるリベラル派の矛盾を、保守派はどう見ているのかについて。


アラバマ州で中絶違法が決定 女性たちの権利はどうなるのか?

アラバマ州で中絶違法が決定 女性たちの権利はどうなるのか?

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は、先日アラバマ州で中絶が禁止される法案が通ったことについて。リベラル派の著者が「これは女性の権利が取り上げられたも同然」と大反論する法律とは、どんな内容なのか?


学生たちを借金から解放させた米実業家に賞賛の声

学生たちを借金から解放させた米実業家に賞賛の声

大学の学費が高額なことで知られるアメリカ。親が裕福ではない限り、大抵の学生が卒業後に返済が始まる学生ローンを受けて進学するため、借金を抱えながら社会人になる。それでは若者たちが夢に向かいにくいと、ある実業家が大学を卒業する生徒、約400人分の学生ローン、総額約44億円を肩代わりすると発表。感動と賞賛の声がアメリカを駆け巡った。


【Red vs. Blue】全米ライフル協会に迎合するトランプ、国連武器貿易条約から離脱か?

【Red vs. Blue】全米ライフル協会に迎合するトランプ、国連武器貿易条約から離脱か?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は、銃規制に反対する全米ライフル協会を支持するトランプ大統領が、同協会の会合で「国連武器貿易条約」から離脱すると発言したことについて。


米大手メディアはなぜキリスト教徒迫害の現状を伝えないのか?

米大手メディアはなぜキリスト教徒迫害の現状を伝えないのか?

米テキサス州に暮らすイスラム教徒のジャーナリスト・西森マリーが、米国内でも報道されにくい保守派の声やテキサス州など南部の住民たちの声をお届けするコラム。今回は、欧米にはびこる「ポリティカル・コレクトネスの風潮」から、イスラム教徒の迫害は欧米でニュースになるのに、キリスト教徒の迫害は報道されないという現状について。






最新の投稿


他人と会話が続かない人が増えている?

他人と会話が続かない人が増えている?

アメリカ生活も20年を過ぎた翻訳家の高柳準が、アメリカ文化とそれにまつわる矛盾を語る「アメリカで暮らしながら想うこと」。今回は、ユーザーの質問に答えるAI 搭載の電子機器がアメリカの日常生活に浸透する一方で、他人と会話のキャッチボールができない人が増えていることについて。


年間180ドルで、世界の一流から学べる夢の授業

年間180ドルで、世界の一流から学べる夢の授業

演技、歌、料理、映像制作など、世界で一流と言われるプロフェッショナルたちから学べるオンライン・プログラムがある。業界の第一線で活躍している夢のような講師陣が揃うだけでなく、その受講料金の安さで、アメリカで人気に火がついた。


打倒アマゾンを掲げるウォルマート 家の冷蔵庫の中まで配達?!

打倒アマゾンを掲げるウォルマート 家の冷蔵庫の中まで配達?!

国土が広大なアメリカでは、宅配に時間が掛かる。そのため企業は短時間で荷物を届けるサービスを競い、時短輸送システムの構築に力を注いでいる。現状、宅配のスピードに関してはアマゾン・ドットコム社のプライム会員サービスが王者の座についているが、それに対抗しようとするのが全米各地に大型店舗を展開する大企業ウォルマート社だ。


今週の神秘ナンバー占い(2019年6月14日~20日)

今週の神秘ナンバー占い(2019年6月14日~20日)

当たりすぎて怖い? ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスがお届けする今週の神秘ナンバー占い。神秘ナンバーとは、東洋数秘術、西洋数秘術、アステカ秘術など複数の占術をベースに導き出す、運気を読み解く数字のこと。あなたの運勢はどのように変化する?!


【Red vs. Blue】日本でのトランプ大統領の発言に、アメリカ国民はどう思ったか?

【Red vs. Blue】日本でのトランプ大統領の発言に、アメリカ国民はどう思ったか?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は先月、日本に新元号初の国賓として訪れたトランプ米大統領が、日本で開催された記者会見で自国の政敵の悪口を言い、金正恩の発言をサポートしたことについて。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング