「名門校に通うと、偏るから行かない!」という選択

「名門校に通うと、偏るから行かない!」という選択

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。ハーバード大学やスタンフォード大学――誰もが知る名門校だが、合格しても、このような名門大学には行きたくない人もいるらしい。


ヒルズデール・カレッジ? それ、どこ?

 先日、知り合いの息子が、ハーバード大学とスタンフォード大学、そしてイェール大学に合格したので、お祝いの会に行ってきた。彼の圧巻の秀才ぶりは、地元ではかなり有名だ。ところが、合格したすべての大学の中から彼が選んだのは、この3つの名門校ではなかった。彼が選んだのは「ヒルズデール・カレッジ」。そのことを親子そろって誇らしげに話してくれた。

 「えっ? ヒルズデール・カレッジ?」――と、思わず聞き返してしまった。誰もが羨むような世界的な名門大学への切符を3つも手にしながら、そこを蹴ってまで行きたい大学があること自体に、私は少し驚いた。ヒルズデール・カレッジは、ミシガン州にある保守派の名門校だ。設立は南北戦争以前と歴史も長い。この大学を最も有名にしているのは、アメリカ憲法の授業が必須科目であることと、人種・宗教・性別に基づく差別を、アメリカで初めて禁止した学校であることの2点である。こう聞くと、いかにもリベラルな大学のような印象を与えるが、保守寄りの大学だ。ちなみに南北戦争で奴隷解放のために戦ったのは、リベラル派ではなく、保守派である。勘違いしている人が大勢いるが、かのエイブラハム・リンカーン大統領も、トランプ大統領と同じ共和党の大統領なのだ。今でもヒルズデール・カレッジでは、いかなる差別も認めない。その教育方針は、保守の歴史に忠実なのである。その親子は、「保守はリベラルよりも、ずっと差別をしないんだ」と、胸を張っていた。

名門校では誇り高き学問は学べない

 名門大学を選ばなかったことに驚く私に、彼はこう言った。「確かに名門校には願書を提出したけれど、実力を試したかっただけ。リベラルの学校になんか行ったら、今どきまともな学問は学べないよ。御用学者が民主党寄りの講義をすることに100万点。偏った人たちから学びたくないからね」。つい「とはいえ、ハーバードに行かないの? せっかく受かったのに?」と聞き返したくもなったが、誇らし気に微笑む親子を前にして、その質問はあえて内に留めることにした。親子は本当に幸せそうだった。

 アメリカの学術界というのは、大手メディア同様、リベラルに偏っている傾向があると言われている。そのため、保守派の中には「いくら名門校でも、リベラルに都合のよい研究を強いられる危険性がある大学には行きたくない」という人も大勢いると彼らは言った。「名門校であることが、必ずしも大学選びの基準にはならない」――またひとつ、知らないアメリカの一面を見たような気がした。

この記事の寄稿者

青山学院大学卒業。コマーシャルなどの映像コーディネーターを経て1998 年、宝塚歌劇団香港公演の制作に参加。その後プロデューサーに転身。株式会社MJ コンテスほか複数企業の代表として、ネバダ州立大学公認のピラティススタジオ日本進出事業や各種研修事業、2007 年に行われた松任谷由実の 「ユーミン・スペクタクル シャングリラⅢ」をはじめとする国内外の舞台・イベント制作など、さまざまな事業を展開。これまでにベストセラー数冊を含む70以上の書籍、DVD 作品を企画、プロデュース。現在も様々な事業を展開しながら“Go Tiny”(大切なものが、すべて半径5メートル以内にあることに気づこう!の意)というライフスタイルの提案も展開中。

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