トランプ大統領、保守派も唖然としたタブー発言で人気高騰

トランプ大統領、保守派も唖然としたタブー発言で人気高騰

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、ポリティカル・コレクトネスに反するとして、歴代の米大統領たちが「演説や発言では使わなかった三文字」をトランプ大統領が頻繁に使うことについて。


政治に「神」を持ち出すトランプの意図

 アメリカ人の大半は、「合衆国憲法補正第2条で定められている政教分離により、大統領を含む国家公務員は宗教色の濃い発言はすべきではない」と考えている。

 政治家が「God」(無冠詞で大文字で始まるGodはキリスト教の神のこと)と言うことが唯一許されているのは、演説を締めくくるフレーズ、「May God bless the United States of America!」(アメリカに神のご加護がありますように)であり、これ以外の場面で「神」を持ち出す政治家は、9割方がリベラルな大手メディアから徹底的に叩かれる。そのため、キリスト教再生派で福音主義者から絶大な人気を誇っていたジョージ・W・ブッシュですら、政治に神を持ち込むことを避け、アメリカでのキリスト教の重要性を語るときも「God」のかわりに「Faith」(信仰)という単語を使っていた。

 オバマ政権以降のアメリカではリベラル派の発言権が主導権を握り、「God」はアンチ・ポリティカル・コレクトネス(PC)なタブー語と化し、大統領になりたい政治家たちは「中道派の票も稼ぐことができるように」と、ひたすら「God」という単語を使うことを避けている。

 こうした背景の中、トランプは2016年の大統領選キャンペーン中も、大統領になった後も、誇らし気に「God bless America!」と連発し、オバマ夫妻がそれを使用するのを避け続けた「Merry Christmas」というフレーズも堂々と使っている

人工中絶に反対するのも神に命じられた任務?

 このことだけでも保守派のキリスト教徒は歓喜しているが、トランプは今年の一般教書演説では人工中絶を批判し、「Let us reaffirm a fundamental truth: all children — born and unborn —are made in the holy image of God」(根本的な真実を再確認しましょう。生まれてきた子供も胎児も、子どもは皆、神聖な神の像にかたどって造られているのです)と言ってのけた。これは、旧約聖書創世記に出てくる記述、「God created man in his own image」(神は、自らの像にかたどって人を創造した)をもとにしたもので、保守派キリスト教徒が自明の理だと信じている一言だ。しかし、政教分離を完全に無視した神がかりな表現であるため、これまでの大統領はみな、人工中絶問題に神を持ち込むことをひたすら避けてきた経緯がある。保守派のブッシュ元大統領でさえも、リベラル派と中道派の反発を恐れて言えなかったこうしたことを、トランプは堂々と一般教書演説で語ったのだ。保守派キリスト教徒はこれに感嘆し、狂喜乱舞している。

 ちなみに、2月11日にメキシコと国境を接するテキサス州エル・パソで行われた壁の建設を訴える演説でも、トランプはアメリカ人の西部開拓に関して「全能の神の手によって我々に与えられた神聖な権利、統治権、安全を求めてこの地にやってきたのです」と言い、観衆を沸き立たせた。この後、アメリカ全土の福音主義派に強く支持されているダラス・バプティスト教会のジェフレス牧師は、「トランプ大統領は、秩序を保ってアメリカ市民を守るという神に命じられた任務を果たしている」と、トランプを絶賛した。

 東西海岸と五大湖に面した州以外のアメリカの内陸部には保守派キリスト教徒が多く、人工中絶に反対することも、壁の建造も、神の意図であると本気で信じている人たちが多い。保守派州で最近話題になったアーカンソー州のスーパーマーケットが配ったチラシに印刷されているフレーズ、「天国には壁と門があり、移民基準は厳しい。地獄は簡単に入れる」は、保守派の本音であり、トランプ支持者の合い言葉にもなっている。米大手メディアの報道では全く伝えられていないが、アメリカの成人人口の約4割を占める保守派キリスト教徒たちは、自分たちの見解を堂々と述べてくれるトランプ大統領に心から感謝しているのである。

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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