トランスジェンダーの選手とそうでない選手の競争はフェアーなのか?

トランスジェンダーの選手とそうでない選手の競争はフェアーなのか?

米テキサス州に暮らすイスラム教徒のジャーナリスト・西森マリーが、米国内でも報道されにくい保守派の声やテキサス州など南部の住民たちの声をお届けするコラム。今回は、生まれたときの性別と異なる性別で活躍するトランスジェンダーのスポーツ選手たちが、そうでない選手との身体能力差が大きく議論されている問題について。


女子選手とトランスジェンダーの女子選手は身体能力が異なる論

 昨年と一昨年、テキサス州の高校女子レスリング大会で、男性へ移行するためにテスタストロンを摂取しているトランスジェンダーの男子、マック・ベッグスさんが連勝した。

 ベッグスさん自身は、男子部門に参加したかったそうだが、テキサス州では、「トランスジェンダーの学生も出生証明書に記された性別で登録しなければならない」という規則があるため、女子部門に参加せざるを得なかったのだ。

 しかし、もしベッグスさんが男子部門に参加していたら、どうなっていただろう?「元女子と戦うのは男の恥」、あるいは「元女子に負けたら恥ずかしい」などという理由で辞退する男子選手が出たかもしれない。

 テキサス州とは反対に、トランスジェンダーの学生が「望む性別で登録できる」コネチカット州では、トランスジェンダーの女子二人が高校の陸上競技会で圧勝している。アメリカでは高校の大会で好成績を収めれば、スポーツ奨学金を得て大学に進むことができる。才能のある選手たちは生活を犠牲にするほどスポーツに打ち込むため、身体能力が異なると言われるトランスジェンダーの選手の受け容れに対し、不満を持つ選手や親もたくさん存在するのではないだろうか。

本音を発言したら批判されるから、言いたくても言えない

 テニス界の大スター、マルチナ・ナヴラチロワ氏が先月17日に、「思春期以降に女性ホルモン治療を受けても、トランスジェンダーの女性は生まれながらの女性より筋肉量が多く骨密度も高く酸素を運ぶ赤血球のレベルも高いので、女子選手と戦わせるのは不公平だ」と指摘した後、リベラル派から激しいバッシングを受けている。自らも同性愛者で、同性愛者の権利の土台を築いた立役者の一人と言ってもよいナヴラチロワ氏でさえこの始末なのだから、一般の人たちはなおさら「トランスジェンダー差別者」と批判されることを恐れて、本音は言えない状況だ。

 MTVビデオ・ミュージック・アワードは、2016年までは女性ベスト・ビデオ賞、男性ベスト・ビデオ賞というカテゴリーを設けていたが、2017年以降は男女別という概念から脱却して最優秀アーティスト賞というカテゴリーに統合した。スポーツ界の性差別を無くすためには、この逆の手段を講じて、「女性」、「男性」、「トランスジェンダーの女性」、「トランスジェンダーの男性」という4つの性別枠を設けるしかないのかも知れない。

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

関連する投稿


人工中絶はいつでも出来る?

人工中絶はいつでも出来る?

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。米バーモント州で、妊娠週に関係なく人工中絶できるという法案が可決したことで教会は大騒ぎ。アメリカはどこに行くのだろう?


アマゾンは、なぜニューヨークの第2本社計画を断念したのか?

アマゾンは、なぜニューヨークの第2本社計画を断念したのか?

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回はアマゾン・ドットコム社が、ニューヨークに第2本社を建設する計画を突然取りやめると発表した件について、リベラル派の意見を述べる。


リベラル派がフェイクニュースと呼ぶ「FOXニュース」視聴率、全米1位

リベラル派がフェイクニュースと呼ぶ「FOXニュース」視聴率、全米1位

トランプ大統領が唯一、フェイクニュースと呼ばないテレビ局としても知られる「FOXニュース・チャンネル」が、米ケーブル局の視聴率調査でCNNなどの大手局を抑えて、堂々たる1位を継続中だ。なぜ、FOXニュースはこれほど人気が高いのだろうか?


トランプ大統領、保守派も唖然としたタブー発言で人気高騰

トランプ大統領、保守派も唖然としたタブー発言で人気高騰

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、ポリティカル・コレクトネスに反するとして、歴代の米大統領たちが「演説や発言では使わなかった三文字」をトランプ大統領が頻繁に使うことについて。


米国のダイバーシティ、言論の自由はどうなった?

米国のダイバーシティ、言論の自由はどうなった?

アメリカ生活20年強。翻訳家の高柳準が、アメリカ文化とそれにまつわる矛盾を語る「アメリカで暮らしながら想うこと」。今回はリベラルな町・シアトル在住の著者が見た、性別や人種、価値観などの多様性について。社会全体の成長を目指す多様性と自己正当化の違いは紙一重。自由と平等を重視するリベラル派の主張は今後どうなるのか?






最新の投稿


今どきのファッションはレンタルが主流!?

今どきのファッションはレンタルが主流!?

アメリカではオンライン・ショッピングが主流となり、名門デパートや専門店が惜しまれながらもその看板を下ろすケースが増えている。それでも景気が良いと言われるアメリカで、突如として頭角を現したショッピング・トレンドが、「レンタル」だ。流行のデザインや色の移り変わりが速いファッション分野に合うこのトレンドが今後の主流となるのか?


成功への選択「理想の家」2019年3月22日~3月28日

成功への選択「理想の家」2019年3月22日~3月28日

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが送る「成功への選択」。算命学、数秘術、占星術などをベースにしたオリジナル手法を用いて、あなたが切り開くべき幸運への扉のヒントを毎週アドバイスします。さて、あなたのビジネスを成功に導くのは、どちらの選択肢でしょうか?


【Red vs. Blue】米国土安全保障省、留学生の取締まりのため「おとり」の偽造大学設立

【Red vs. Blue】米国土安全保障省、留学生の取締まりのため「おとり」の偽造大学設立

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は不法滞在者のおとり捜査をするために、米国土安全保障省が「おとりの偽造大学」を創設していたことについて。


ミレニアル世代は「社会主義」のイメージまで塗り替える?

ミレニアル世代は「社会主義」のイメージまで塗り替える?

アメリカ生活20年強。翻訳家の高柳準が、アメリカ文化とそれにまつわる矛盾を語る「アメリカで暮らしながら想うこと」。今回は資本主義よりも社会主義に魅せられるという、ミレニアル世代たちについて。なぜ今、社会主義なのだろう?


アメリカの若者は占星術の虜?

アメリカの若者は占星術の虜?

ニューヨークにある名門コロンビア大学バーナードカレッジの学生、光田有希が、アメリカの大学生たちに人気のアプリやサービス、学生たちのトレンドなどの情報をお届けする。今回は占いにハマる人が急増中という、アメリカのミレニアル世代たちについて。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング