【Red vs. Blue】米国土安全保障省、留学生の取締まりのため「おとり」の偽造大学設立

【Red vs. Blue】米国土安全保障省、留学生の取締まりのため「おとり」の偽造大学設立

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は不法滞在者のおとり捜査をするために、米国土安全保障省が「おとりの偽造大学」を創設していたことについて。


 米連邦政府の起訴状によると、米国土安全保障省は2016年に「実際の授業はないが、お金さえ払えば学生ビザに必要な書類を発行する」というファーミングハム大学という名称の「おとり」の偽造大学をミシガン州に設立した。巧妙なウェブサイトを設置し、実際に職員が駐在するオフィスも構え、学生ビザで入国して米国で仕事を得たいと考えている外国人を対象に罠をかけた結果、学生を募集した斡旋業者の男8人が逮捕された。逮捕された男たちは、2017年〜19年にかけて少なくとも600人の外国人から、学生ビザ取得に必要な費用として$5,000〜$20,000を徴収。学生ビザで入国させた外国人に対し、偽造大学のカリキュラム実習生として就労許可を不法に取得したとされる。同様な「おとりの偽造大学」はニュージャージー州にも2013年に設置されたことがあり、21人の斡旋業者や、彼らの雇用者らが起訴されている。偽造大学から違法に学生ビザを得た人々の全員に犯罪の関与への意思があったかどうかの議論が分かれるところだが、「おとりの偽造大学」に対するアメリカの保守派とリベラル派の見解は?

出典:NPR
https://www.npr.org/2019/01/31/690260797/homeland-security-created-a-fake-university-in-michigan-as-part-of-immigration-s

RED:不法移民たちは、アメリカの移民法など気にもかけないという証し

Proof that illegal aliens could care less about American Immigration Laws

 リベラル派のメディア、政治家、活動家の多くは認めるのを拒むかもしれないが、リベラルメディアでも「不法移民はルールを守れない人間のくず」であるという当たり前のことを報道したメディアがある。それはリベラルなNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)だが、彼らの報道には、拍手を送らねばならないだろう。

 「おとり捜査の一部として設立された国土安全保障省の偽造大学に入学して逮捕された人々(不法移民)は、アメリカの法律を潜り抜けようとしていることを自覚していながら、それを気にもかけていない」という事実を強調すれば、その報道はもっと良いものになっただろう。アメリカに住むことで与えられる機会、自由、安全などを考慮すると、なぜ彼らが母国に帰ろうとせず、アメリカに居続けることを望むのかは理解できる。しかし彼らも他の人たちと同様に、きちんと申請して順番を守るべきだ。思慮深く法律に従って永住ビザや市民権を申請し、長い間待った末に獲得した人が毎年、何十万人いるのだから。

 私はそうやって法律を守った人たちに対しては敬意を表する。しかし、犯罪者のウジ虫どもはどうだ? 奴らは合法的な手続きがどうであれ、とにかくアメリカに居座る権利があると決めて、生まれながらのアメリカ市民や帰化したアメリカ市民ならびに合法的な永住権保持者をあざむこうというのか? 合法的なビザ取得の手続きは一部の人にとっては困難で時間がかかることは事実だろうし、確かに改善の余地はある。しかし、それでもここは法治国家なのだ。自分たちの利己的な欲望のために法を犯し、辛抱強く待っている人たちを荒々しく傲慢に押しやる輩は、軽蔑にしか値しない。入国管理は(どの国においても)すべての人を公平に、法の下に平等に取り扱うよう努める秩序あるプロセスでなければならない。それ以下を期待するのは全く間違っている。

BLUE:「アメリカへようこそ、ただし居座らないで」でいいのか?

Welcome to America, but Please Don't Stay

 NPRのこの記事が報道された後、偽造大学ファーミングハム大学に登録した人が、さらに130人も逮捕された。事件に精通している弁護士は、登録した学生の全てが、この学校が偽造だと知っていたわけではないと述べている。そして、学生のうちの何人かは、他の機関で高度な学位を追求していたが、米国にいる間に働く必要もあったと言う。留学生が勉強しながら働くことを可能にするプログラムはアメリカでは合法であり、合法的な大学にはそうしたプログラムはある。

 学生の真の動機に関係なく、事実は「米国政府によって作られた偽の大学が、学生が法を犯す手伝いをした」ということだ。ファーミングハム大学は、どこまでも怪しげだ。もしアメリカ政府が意図的に法を犯すのが目に見えている8人の斡旋業者を雇って不法入学する学生を集めてこなかったとしたら、学生たちは自力で偽大学を見つけただろうか? もしこの偽造大学が存在しなかったら、学生たちはアメリカにとどまろうとしただろうか? 彼らは米国政府の援助なしに滞在することができただろうか? 何にせよ、学生たちの計画とは、「教育を受けながら仕事をすること」だったのだ。

 この作戦は、かつてのアメリカ保守主義の偉大な姿勢――財政責任――に唾を吐きかけるものだ。一昔前、アメリカ人が誇らしげにアメリカン・ドリームと呼んだものを追い求めた人たちを逮捕するために、何万ドルも費やしたのだ。これは移民伝説そのものだ——人々は夢以外の何も持たずやって来て、ただ生き残り、豊かになるために必要なことはなんでもしようとする。メラニア・トランプを例に上げてみよう。彼女はスロベニアから移民し、ファッションモデルとしての仕事を見つけ、やがてアメリカのファーストレディになったのだ。

 それでも保守派は、このおとり捜査を、移民に対する強硬な姿勢への正当性として上げるだろう。右派は、大学はリベラル主義の温床だとして、より一層否定している。このNPRの記事は巧みに右派の最悪の世界観をあぶり出している。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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