ミレニアル世代は「社会主義」のイメージまで塗り替える?

ミレニアル世代は「社会主義」のイメージまで塗り替える?

アメリカ生活20年強。翻訳家の高柳準が、アメリカ文化とそれにまつわる矛盾を語る「アメリカで暮らしながら想うこと」。今回は資本主義よりも社会主義に魅せられるという、ミレニアル世代たちについて。なぜ今、社会主義なのだろう?


ミレニアル世代がアメリカを変えていく?

 「アメリカ人は子供の頃から自立心が強い」という印象があるかも知れないが、実際には日本の子供の方が、ある意味で自立している。日本では子供だけで行動している様子を目にすることは珍しくないだろうが、アメリカではそうした光景を見るのは稀だ。例えば保護者なしに公園で児童を遊ばせていた親が通報されてしまうことも頻繁に起きるほど、子供は社会のものだと考えられている。筆者の住むワシントン州では、児童を乗せた停止中のスクールバスを追い越した車には罰金419ドルが課される可能性がある(アメリカでは通学用のバスを追い越すことは、子供の安全を守るために法律違反とされる)。つまり、アメリカでは未来を担う子供の安全対策と法律が密に連携しているのだ。

 こうした背景から、アメリカの子供には意外にも自由が少ないと指摘する海外からの声がニューヨーク・タイムズ紙にも届くほどであり、「伸び伸びと育った自立心が強いアメリカの子供たち」というイメージは過去のものになりつつある。

 とはいっても、こうした環境で育ち、時代の変化をあらわず代表と言われるミレニアル世代は、自分の権利を強く主張して従来の型にはまらない世代としても知られている。LGBTQ や #MeToo ムーブメントを始め、平等や多様性を当たり前のように理解し、インターネットと共に育った彼らはSNSを利用して、社会的な課題を世界中に拡める役割を担った世代とも言うことができるだろう。

ミレニアル世代で社会主義が人気?

 しかし近年、彼らの間で興味深い動きが起きている。ミレニアル世代が資本主義よりも社会主義に傾倒しているというのである。個人の自由を享受する彼らが、自由とは対照的な社会主義になぜ興味を示しているのだろう?

 資本主義のシステムを信頼できないという彼らは、単一支払者制度の国民皆保険、公立大学の学費無償化などを支持する「デモクラティック・ソーシャリズム(社会民主主義)」に好感を寄せているのだ。最近では社会主義色の濃いミレニアル世代の米下院議員が何かと物議を醸している。

 そんな彼らのことを責任転嫁や、あらゆる制度からの保護に慣れすぎた世代と批判する声もある。しかし、来年の米大統領選に向けて、そんな批判をものともせず、あらゆる情報の拡散に長けたミレニアル世代が今後さらに自己主張していく機会は増えていきそうだ。

この記事の寄稿者

東京都出身。インターナショナル・スクール、日本での普通教育を経て、1992年に渡米。シアトルで写真や美術史などを学んだのち、ニューヨーク州ロングアイランド大学で社会科学を専攻。在学中にはジプシー女性の社会的立場、低所得層のインド女性の人権などに関する研究に力を入れた。大学卒業後は日系新聞社、大手IT企業などで専任翻訳、ビジネス・コーディネーターを務め、その後、独立。現在はシアトルで翻訳家として活動を続けている。得意分野はテクノロジー関連の翻訳。趣味は写真、読書など幅広く、音楽はクラッシックや80年代までのパンク、ヒップホップやトリップホップ、初期のレスター・ヤングなどを好む。

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