アメリカ史上最大規模の大学入試スキャンダル

アメリカ史上最大規模の大学入試スキャンダル

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。先月12日に明らかにされたアメリカの複数の名門大学への不正入学に絡む贈収賄事件。この事件の問題のひとつとされる「レガシー・プログラム」に関する記事は当サイトでも既に公開しているが、アメリカのこの現状に物申すリベラル派アメリカ人ライターは、これはトランプ大統領のせいだと言う。その根拠はいかに?


なぜ、子供のために不正行為をするのか?

 米カリフォルニア州で仲介業者の男性が裕福な親から多額の金を受け取り、その見返りとして、彼らの子供たちを一流大学に入学させていたとして、先月12日に逮捕された。その男は受け取った金の一部をテスト管理者や大学のスポーツチームのコーチらへの賄賂に使い、残りは全て自分のために保管して私腹を肥やしていた。

 良い教育は、人生で成功するために極めて重要だ。昔から、優秀な大学に入るのは裕福な家庭の子供たちが有利だった。まず、お金があれば子供たちに良い家庭教師やカウンセラーをつけることが出来る。あるいはセーリング、ボート、水球のように「お金が掛かるスポーツ」を選び、その選手としてスポーツ推薦入学をすることも可能だろう。それに加え多くの大学には、卒業生の子供たちが優先される「レガシー・プログラム」というものもある。極端な場合、裕福な親は子供たちが優遇措置を受けることができるよう、学校に数百万ドルの寄付をすることもある。

 今回、摘発された事件に関与した親は、「より簡単な選択肢」、つまり「不正行為をすること」を選んだ。その手口は、本人とは異なる人が入学試験を受けたり、テストの解答を先に教えたり、スポーツの経験のない子供を有望な選手のように見せかける偽のプロフィールを作成するというものだった。大学のスポーツのコーチたちが賄賂を受け取り、スポーツ選手ではない子供たちをスポーツ選手として推薦入学させていたのである。

これは「アメリカの価値観」に反するものだ

 私は、これはリベラル派と保守派の意見の相違だと言うつもりはない。不正をした親たちの中には有名人、不動産投資家、大手企業の最高経営責任者なども含まれており、親の政治思想は多様である。その大半は自分の子供たちに人生で成功するための最良の機会を与えようとしている「親」であり、子供を助けるために悪い決断をしてしまったのであろう。しかし、これはドナルド・トランプが大統領になった選挙以来、より顕著になってきたアメリカ社会の醜い側面を示していると私は思う。

 アメリカでは、「大統領は国の道徳的な基調を作る」と言われている。アメリカの歴史を振り返ると、大統領は国民に強さや誠実さ、そして名誉といった、より高い理想に生きるように奮い立たせようとしてきた。しかし、トランプだけは他のどの大統領と異なっている。彼は嘘つきで不正を行い、なぜかそれを誇りに思っている。彼には道義心も恥もない。彼の人生には自身の個人的な豊かさと自我の満足以上の目的はないのだ。こんな男を指導者として選出するような国では、このような醜い大学入試スキャンダルがあっても不思議ではないと言えるだろう。

この事件の犠牲者は誰なのか?

 この事件の犠牲者は、一生懸命勉強して一流大学入学に値する結果を残したにもかかわらず、努力もしていないのに裕福な親を持つ子供たちが入学してしまったせいで、入学できなかった子供たちだ。アメリカは、こんなことがまかり通る国ではなかった。しかし、トランプが大統領であるアメリカでは、このようなことが、まるで「あるべき姿」になってしまっている。今のアメリカでは、お金が何よりも重要であり、お金を持っていない人が、お金を持っている人達によって利用されるのは当然のことなのだ。早く本来の良きアメリカに戻さなければ、このような犠牲者は増える一方だろう。

この記事の寄稿者

1974年生まれ。文学書とコーヒーを愛するコラムニスト。書籍に関しては幅広く読むが、コーヒーに関しては、豆の原産地から流通や焙煎の過程までを詳細にフォローし、納得したものだけを味わうことにしている。温厚で穏やかな性格であるものの、コーヒー豆へのこだわりと同様に理路整然としない、あるいは納得できない社会の動きに対しては、牙をむく活動派的な一面もある。妻と犬一匹と共に、カリフォルニア州オークランド在住。

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